ネズミは「チーズが好き」は人間の思い込みだ 野生のネズミの本当の好物は「穀物や果実」

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人間のカップルは単なる生殖関係にとどまらず、最小単位の群れとしての側面も持つため、子供を持つか否か、どちらが稼ぐか、同性か異性かまで、かぎりなく自由にカスタマイズする選択肢がある。もちろん、結婚するかしないかまでも自由だ。

もちろん、人気を集めやすいタイプは存在するけれど、人によって求めるものが違うため、誰にとっても好ましい究極のパートナーのタイプは存在していない。

強気にアプローチしてくるAさんは怖いから好きじゃない。B君が心惹(ひ)かれているCちゃんは、守ってくれるようなD君が好きだけど、そんな彼は自立したAさんがタイプ。そんな話は珍しいものじゃない。

それぞれが欲するものと、それぞれが提供できるものが食い違う物々交換の時代を経て、効率よく需要と供給を一致させるために貨幣ができたけれど、恋愛市場だけは今日まで不器用にすれ違い続けている。

そもそも自分の好みを正確に把握できている人がどれほどいるだろうか。だから好みのタイプを問われた際に、このように言ってお茶を濁す人も多いのである。

「好きになった人がタイプ」

好きになった人がタイプの究極系が、プレーリーハタネズミだ。ネズミには珍しい一夫一妻制を貫くこのネズミは、なんと独身の間はそれぞれのメスを見分けることができないのである。

極端に悪い言い方をすれば、「女なら誰でもいい」状態であるのだが、ここからが彼らの素敵なところだ。

つがいになると、自分のパートナーのメスを大好きになるのだ。結婚した途端にメスたちの匂いや見た目、行動の違いを区別できるようになり、そのうえで一夫一妻制を貫くのだ。家庭を脅かすほかのネズミが来たら、オスはもちろんのこと、メスだって容赦なく攻撃する。

案外、人間も似たようなものではないだろうかと思う。

はっきり言って、私たちもほとんどの人間を見分けているとは言えないだろう。限られた人生の中で、よく知ることができるのは全体の中のわずかな人にすぎない。個を見分ける能力によって、ある個体を特別なものと認識することが、愛の始まりなのかもしれない。

次ページ人間の場合、条件が最もいい人に群がるというわけでもない
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