先代が津軽三味線の名手であったことから、夫婦で津軽三味線をはじめ、お客様からリクエストがあれば夫婦の唄と演奏を披露した。また日本料理の板前であった店主が、こだわりの素材を使用した料理を先付で食べられることでも定評がある。
現在の様子を、店主の相磯真(あいそ・まこと)さんにうかがった。
「辰巳新道にきてからはお店も狭くなったし、1日10人くらいきたらいいほうだよ。無理せず夫婦でおもてなしをしてきたんだよね。緊急事態宣言後は、4月から2カ月間お店を休業し、6月からお店を再開。感染症対策として除菌はもちろん、席を離したり、マイクカバーをお客様毎に配ったり、妻のアイデアで入口に靴裏除菌なんかも作ってみたりして。お客様も少しずつ戻ってきて、辰巳新道も徐々に賑わってきたねって喜んでたんだ」
どちらかが倒れる訳にはいかない
ところが、秋から冬にかけて第3波が大きな打撃となる。悩んだ末、12月初旬から再度、お店を休業することに決めた。
「徐々に客足が減っていって、お店を開けていても日に2~3人。それでもなんとかお店を開けていたんだけど、第3波で感染者がどんどん増えている状況はさすがにまずいなと思って。
妻が喘息だからコロナになっちゃったら大変でしょ。彼女を一人休ませても俺が感染しちゃったら、結局一緒だしねえ。だから12月初旬からお店を休業してるんだよ。これもまた料理の修行期間だと思ってさ。
ただねえ、お客さんと話す毎日だったからさ、家でじっとしてるのは辛いねえ。お客さんからも『行くところがなくて困る』って声もあるしさ。状況が収まったらまたお店は時短ででも再開するつもりだよ。そんな焦ってやる商売でもないからさ。夫婦でゆっくりやっていこうと思ってるよ」
末永く夫婦で伴走していくには、互いを気遣うことが欠かせない。コロナ禍という大変な状況ではあるものの、いつかこの災禍が過ぎ去っていくことを信じ、和風スナック香澄は準備をしながらその日を待っている。それは、お店を愛する常連客らも同じである。
緊急事態宣言以降、筆者の元にも、全国のママからSOSの声が届いていた。「何もしなければお店をたたむだけ」。そんな悲痛な声を受け、5月には、オンライン上で全国のママと気軽にコミュニケーションができる「オンラインスナック横丁」をスタートした。
当初は「お酒も自前、カラオケも歌えず、ママと話をするのにお金を出す人がいるの?」という声もあった。しかし7カ月が過ぎた今、国内だけでなく海外のスナックを含め、40のスナックが加盟するサービスへと成長した。
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