20億円のコスト削減が1年前倒しで実現した訳 DXで「品質向上」と「コストダウン」を同時に達成

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デジタルトランスフォーメーション(DX)の本質は「デジタル技術と合理的マネジメントの融合」です(写真:metamorworks/PIXTA)
ドワンゴが運営しているニコニコ動画・生放送のインフラ改革が行われた。年間50億円を費やしていたインフラコストを約20億円下げて、かつ、高画質化を実現するという計画だった。3年で終わらせる予定であったが、実際には1年前倒しで終わった。この改革にドワンゴのインフラチームの部長として取り組んだ各務茂雄氏。デジタル技術とマネジメントの関係に精通している各務氏が『世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。』を上梓した。今、注目を集めているデジタルトランスフォーメーション(DX)について解説していく。 

ドワンゴはなぜ改革を迫られたのか

2020年3月末の決算で、ドワンゴが黒字に転換した。ドワンゴの改革の打ち手がほぼすべて終わった結果である。

上の表の数字は、ドワンゴの親会社であるKADOKAWAのWEBサービスセグメントの売上高と営業利益である(外部配信先では図表を閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。2018年、2019年と営業赤字が続いていたが、2020年には黒字化した。これらの数字にはドワンゴが提供している日本最大級の動画配信サービスである「ニコニコ」という大きなビジネスの浮沈が影響する。

『世界一わかりやすいDX入門 GAFAな働き方を普通の日本の会社でやってみた。』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

ニコニコのビジネスの中で、もっとも有名なのはニコニコ動画という動画共有サイトであろう。ニコニコ動画は2006年に開始され、無料が当たり前だった日本のネットサービスに、有料課金の仕組みを取り入れた画期的なものだった。

続いて、2007年には「ニコニコ生放送」というライブストリーミングサービスを展開。さらに、2012年には「ニコニコ超会議」というユーザー向けのミーティングを千葉・幕張で開催し、リアル来場者を約9万人、ネット来場者を300万人以上集めて、世の耳目を集めた。

ビジネスを急成長させていったニコニコだったが、2010年代中盤以降、インフラ(デジタルサービスを提供するためのハードウェア、OS、ミドルウェア、アプリケーション等)の改革が必要になってきた。ユーザーが高画質化を求めるようになり、それに応じて必要なインフラを増強する必要が出てきたのだ。

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