20億円のコスト削減が1年前倒しで実現した訳 DXで「品質向上」と「コストダウン」を同時に達成

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具体的に言うと、数百Gbpsのネットワークと、数百台の配信サーバーにより動画/生放送を配信することになった。数百Gbpsの規模をわかりやく説明すると、会議・ミーティングアプリのZoomで20万人が同時に使えるぐらいの規模に相当する。

当時のニコニコのインフラを担当するチームでは、仕事が属人化していて、チームでの仕事が難しい状況だった。例えば、ある個人に仕事が集中し、チームとしては技術選定をするためのスキルも時間も足らず、技術選定は不適切、さらには業者選定のコンペも十分にできない状況だった。さらに、購買や契約が個人に依存し、チーム・組織としてスケールメリットが生かせないという事態も発生していた。

結果、仕事のスピードが下がり、コストは上がり、サービスのレベルは下がっていくという悪循環に陥っていた。当然、有料会員は減少していく。2018年3月期のIR情報には「有料会員数の減少や新サービス投入の遅れから通期で赤字となり、セグメントで損失を計上」と記載された。

筆者は2017年1月にドワンゴのインフラチームの部長として、会社の門をくぐり、その年の2017年4月からインフラ改革を推進していくことになった。まず仕事の属人化を解消するために、サービス型チームを導入した。

サービス型チームとは、簡単に言えば、ほぼすべての仕事をサービス(機能)として定義し、その利用者(社内外)に対して、チームとしてサービスの提供と品質を約束するというものである。チームの中では、メンバー間でのロール(役割)の分担を明確にし、何に責任をもって仕事をするかということを各人が理解し、仕事に対するオーナーシップをもってもらう。

具体的には、サービス型チームの役割分担は次のようになる。

・サービスオーナー:サービス全体(売り上げ、費用、品質)の責任者
・スクラムマスター:スケジュール管理に責任をもつ
・アーキテクト:サービス設計に責任をもつ
・エンジニア:システム開発と構築に責任をもつ
・オペレーター:オペレーション(運営・運用)について責任をもつ

ほかにも、類似した分野のサービスチームをまとめる責任者としてストラテジストという役割もあるが、サービス型チームを理解するには、まずは、上の5つのロールがあることを押さえておくとよい。

「コストダウン」と「品質アップ」を同時達成

ロールによって仕事のオーナーシップが明確になりあいまいさがなくなる。各メンバーの仕事の目的がクリアになり、実務に集中でき、仕事の品質が向上しいく。「あの仕事は、誰がやるのか?」というような声があがり、仕事そっちのけで押し付け合いをしたり、上長が時間をかけて調整するといったようなロスはなくなっていく。必然的に仕事も速くなっていく。

ドワンゴでは、障害続きだったインフラが安定化していき、ユーザーに直結するWEBサイトやスマホアプリの開発担当チームとの信頼関係が徐々に改善し、ニコニコの仕事全体がスムーズに進むようになってきた。

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