20億円のコスト削減が1年前倒しで実現した訳 DXで「品質向上」と「コストダウン」を同時に達成
さらに、インフラやアプリの開発の状況をWiki(WEBブラウザを使って情報共有する仕組み)、チャットでの議論、口頭での会話などを通じて共有することにより、関係者の信頼関係が強固になり、さらに仕事の品質とスピードが上がり、コスト削減も進んでいく。
こうなると、社内外から優秀な人材が集まりだし、さらにいいサイクルが回りだす。改革開始の1年後の2018年3月末には目標達成のメドがついてしまった。
2017年4月に開始したドワンゴのインフラ改革は、3年かけて品質アップとコストダウンを同時に達成するというものであった。品質アップの面で求められるのは、動画・生放送の高画質化、ネットワーク帯域の増加(高画質化などに伴う通信量増加への対応)というものであった。コストダウンの面では、50億円ほどかかっていたインフラコストを3年かけて、約20億円下げるというものであった。
サービス型チームを導入して、仕事を進めていくうちに、1年で達成のメドがつき、2年後、つまり1年前倒しでインフラ改革のゴールを達成してしまったのだった。
デジタル技術と合理的マネジメントの融合
ドワンゴのインフラ改革で行われたことは、仕事のスピードと品質を上げつつコストは下げる、つまりコストパフォーマンスの最大化を追求することであった。実は、これはDX(デジタルトランスフォーメーション)の成功の基準でもあるのだ。
「ECサイトの構築・集客」「サブスクリプションサービスの構築」に成功したことをもって、DXの成功事例としているケースも多い。たしかに、デジタルビジネスには成功しているのだが、それをもってDXの成功とはならない。
DXの本質は「デジタル技術と合理的マネジメントの融合」である。その融合がうまくいけば、「仕事のスピードと品質の向上」「コストダウン」を同時に達成できるのだ。
ドワンゴの改革も、実はDXとはいえない。なぜなら、デジタル技術をビジネスの根幹としているデジタルネイティブ企業であるから、「デジタルトランスフォーメーション」の「デジタル」をわざわざつける必要はない。単なるトランスフォーメーション(改革)である。
しかしながら、サービス型チームの導入は、一般の企業でDXを推進する立場にある方の参考になるはずだ。前回、DXに成功するには、「『GAFAな働き方』を取り入れていくほかない」と述べた。GAFAな働き方とは文字どおりGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)で実践されている働き方だ。その特徴を5点ほど挙げた。そのうちの1つが「仕事の役割が明確に設計されている」というものだ。サービス型チームは仕事の役割が明確に設計されているチームそのものである。
繰り返しになるが、DXの本質は「デジタル技術と合理的マネジメントの融合」である。いくらデジタル技術を導入しても、合理的マネジメントが存在しなければ、DXは実現しない。DXを推進しようとしている組織や、始めたもののなかなか進まない組織は、自社内に合理的なマネジメントがなされているかをチェックすることから始めてみてはいかがだろうか。
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