格闘家、起業…野球「元ドラフト1位」の波乱人生 戦力外から11年、古木克明が語る今の思い
「抵抗は全然ないです。中学生になっている娘には会えていません。だから娘がどんな思いでテレビを見ているのかはわかりません。でも、テレビを通じて『お父さんスゴイ』って思ってもらえるような父ちゃんでいたいんです。娘に自慢に思ってもらえるような父ちゃんになりたいんです」
そして、はにかむような表情で、古木はこう結んだ。
「正直、『娘にモテたい』という思いもあるんです……」
娘から自慢される父でありたい――。その思いこそが、今の古木にとっての「モテたい」という原動力となっている。迷走し、もがき、あがき続けた30代を過ぎ、40歳となった古木に最後の質問をする。
――今の生活は楽しいですか? そして、幸せですか?
質問するとすぐに古木は口を開いた。そこには何の逡巡もなかった。
「精神的に、そして仕事に関して言えば幸せです。今、いろいろなことにチャレンジしているのは楽しいし、幸福を感じています。でも、金銭的に言えばまだまだです。新しい家族もできて、妻と子どもを支えていかなければならないし、もっともっと頑張らなくちゃいけない。それでも、やっぱり幸せなんだと思います」
苦難の果てに見つけた新しい道
現在は、自身が立ち上げたアパレルブランドの運営を筆頭にインターネットを使ったオンラインサロンを始めた。全国の野球少年少女たちに、リモートで指導する機会を得た。また、神奈川県内では3つのスクールを掛け持ちしながら指導をしている。ボーイズリーグの横浜保土谷ボーイズでも定期的に子どもたちを指導している。
苦難の果てに少しずつ、古木は新しい道を見つけつつある。もちろん、この先の人生も順風満帆にいく保証はない。今後もさまざまな試練が押し寄せてくることだろう。それでも古木は前を向く。「モテたい」という思いとともに人生を歩み続ける。新たな「古木ブランド」を構築していく。
「僕はまだ何も活躍していないし、結果を残していない。だから、今テレビに出るのは正直恥ずかしいんです。『今じゃねぇだろ、恥ずかしいよ』って自分に言っているんです。だから、今度取材していただけるときには、もうちょっと結果を残してカッコいい姿を放送してもらいたいな」
白い歯をこぼして、古木は静かに笑った。
(文中敬称略、文:長谷川晶一/ノンフィクションライター)
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