格闘家、起業…野球「元ドラフト1位」の波乱人生 戦力外から11年、古木克明が語る今の思い
「古木ブランド」を失う怖さと過ごした30代
波乱万丈の30代だった――。30歳になった頃は格闘家として、日の当たらない地下道場でスパーリングに汗を流す日々を送っていた。33歳のときにはハワイで野球選手として白球を追いかけていた。
30代半ばになると、一転して大学院で事業構想を学ぶ学生となった。そして、つい先月40代を迎えたばかりの古木克明は、巧みにミシンを操りながら、自身が立ち上げたアパレルブランド「The Baseball Surfer」のTシャツ縫製に励んでいる。
「野球しかやってこなかった人生だったので、次に何をすればいいのかがまったくわかりませんでした。正直言えば、戦力外通告を受けたその後の人生が怖くて仕方がなかった。どうやってお金を稼げばいいのか、どうやって生きていけばいいのか? そんなことばかり考えていました」
2009年オフ、当時在籍していたオリックス・バファローズから戦力外通告を受けた。29歳になる直前のことだった。
そんな折に「格闘技をやってみないか?」という誘いを受けた。まったくの未経験ながら「四角いジャングル」と称されるリングに飛び込んだのは、古木の心の奥底に潜んでいた「怖さ」からだった。
「野球を辞めて、いきなり格闘技の世界に飛び込むことについて、世間の人たちからいろいろ言われたけど、まったく気になりませんでした。ただ、当時の僕が気にしていたのは野球を辞めてしまったことで、せっかくの『古木克明というブランド』を失ってしまうことでした。それはとても怖いことでした。そのブランドをどう継続させ、輝かせていけばいいのか。そんなことを考えて、格闘技の世界を目指したんです」