名大と岐阜大で進む「農学部統合」構想の波紋 広大な土地のある岐阜にキャンパス集約も

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現在、名大農学部は名古屋市の東山キャンパスのほか、農場や演習林などが愛知県内各地に点在している。広大な土地が必要なのは農学系の宿命だが、とくに近年、東山キャンパスはノーベル賞関連施設や産学連携の新施設などがひしめきあっている。

名古屋大学の東山キャンパス(写真:YUTAKA/アフロ)

「東山にはもう場所がなく、一方で農学部の施設は老朽化や耐震性不足も指摘されており、何とかしなければという認識はある。そうした中で本気かどうかわからないレベルだが、農学部統合の話も聞く」と名大関係者は漏らす。

こうした名大側の事情に対して、周辺にまだ土地の広がる岐阜大へのキャンパス移転は合理的な選択肢の1つであり、岐阜大としてはまさに“名を捨てて実(場所や施設)を取る”決断と言える。

統合されれば、農学部として東京大学や北海道大学に次ぐ規模となる見込みで、最新の設備や研究環境を共有でき、さらに「名大」の看板も掲げられるとなれば、少子化や激しい大学間競争の中で十分にメリットは大きいのかもしれない。

両大学は機構への統合に併せて、生物の細胞表面を覆う「糖鎖」科学をはじめ、航空宇宙生産技術、医療情報、そして農学の4つの研究拠点を連携して整備すると明らかにしていた。

先行して糖鎖分野では「糖鎖生命コア研究拠点」の看板が岐阜大キャンパス内に掲げられ、これまでの両大学の実績を生かし、この分野で「世界一」の研究拠点化を目指してスタートしている。そして農学も両大学の機能を強化、産学連携も進めて世界と地域に貢献する「東海農学ステーション」を構築すると打ち出していた。

教員から反発や疑問の声も

だが、今回わかった「新農学部」構想は、より具体的で踏み込んだ内容だ。現段階でこの構想は、機構執行部と両大学の学部長、そして特命の教員で構成される「タスクフォース」レベルで進み、各学部・学科が今後10年間で目指す中長期ビジョンの基本方針として検討されている。

それが11月ごろから岐阜大応用生物科学部では教授会まで下ろされ、関係者によると「一方的な決定事項」として受け止められているという。岐阜大では法人統合前、「地域科学部」を廃止して経営学部を新設する構想をめぐり、学内外から反対運動が起きた。この地域科学部の再編計画は現在、表面上は凍結されているが、執行部に対する不信感が根強く残っているようだ。

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