名大と岐阜大で進む「農学部統合」構想の波紋 広大な土地のある岐阜にキャンパス集約も

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4月1日に名古屋大で開かれた東海国立大学機構発足式で手を組む名古屋大の松尾清一総長(機構長、中央左)と岐阜大の森脇久隆学長(副機構長、中央右)ら(写真:筆者撮影)

ノーベル賞学者を複数輩出する名古屋大学と、隣県で地域密着を売りにする岐阜大学。規模や気風は違う両大学だが、ここ数年は全国初の県境をまたいだ経営統合に邁進、今年4月に新法人「東海国立大学機構」が始動した。

しかし、スタート時点からコロナ禍が拡大。各キャンパスでの教育研究活動は縮小した状態が続いている。そうした中、各分野や学部ごとに両大学の連携を深める動きが着々と進んでいることがわかった。とくに「農学」分野は他分野よりも一歩踏み込んだ「学部統合」が検討されているが、その内容や議論のプロセスをめぐっては、大いに波紋が広がりそうだ。

岐阜大獣医学科を独立、残りを名大に

名古屋大学は1951年に農学部を開設。食や生物資源に関わる研究を進め、大学院生命農学研究科ではバイオテクノロジーを含めた幅広い先端研究で世界的にも評価されてきた。

一方の岐阜大学は1923年に開かれた岐阜高等農林学校を前身とし、名大より2年早い1949年に農学部を設置している。2004年に獣医学科などと合わせて応用生物科学部と改称されたが、100年近い歴史を持つ学部としてOBらの結束は強い。

農学部系キャンパスの集約も構想される岐阜大学(写真:筆者撮影)

今回、筆者が取材した関係者の証言や入手した資料によれば、岐阜大応用生物科学部からは、まず獣医学科を切り離して「獣医学部」として独立させることが検討されている。

これはここ数年、岐阜県が苦闘している豚コレラ(CSF、豚熱)や新型コロナをはじめとした人獣共通の感染症対策の重要性を考えると当然の流れとも見える。

一方、獣医学系以外の応用生物科学部・大学院の定員は名大に移し、名大の新農学系学部・大学院として統合する。これによって、将来的に岐阜大には「獣医学部」が残り、応用生物科学部は消滅してしまうことになる。その代わり、「キャンパスは10年をかけて岐阜に集約する」という構想だ。

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