コロナ禍が「パラスポーツ」を学ぶ絶好機の理由 制限・制約を抱える体験が学びにつながる

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「制限されるということでは、コロナとリンクすると思いました。障害があるから行きたいところに行けない。スロープを作ってくれたら、もしくはほかの人が声をかけてくれたら、お店に行けるんです。感染対策も、どうすればできるかを考えればいいのではないかと思います」(山本選手)

また、今回のセミナーでは「(車いすの)私と鬼ごっこするなら、どんなルールにする?」と子供たちのアイデアを募集。子供たちは、公平になるような遊びを次々と出した。「苦手なことも工夫してやる。できる、できないではなく、どうやったらできるかを考えてください」ということを何度も子供たちに伝えた。

そうした話の中から、障害者が日常的に受けている制限、制約の多さを知り、自分に何ができるかを考えてもらう。これは、子供だけでなく、親やわれわれにも問いかけていた。

動画や写真で見ることで記憶に残りやすくなる

兵庫県から参加した小5男児と母親の話を聞いた。男児は「パラパワーリフティングで300キロ(世界記録は男子107キロ超級で310キロ)がすごいと思った」と言う。できないことができるようになった経験を聞くと「水泳で100メートル泳ぐのが大変だったけど、足が疲れないように工夫したら泳げた」と胸を張った。

母親は「山本さんは前向きで素敵だと思いました。両親が自転車にチャレンジする方向でサポートしてくれた話が心に残りました」と話した。

障害を乗り越えている姿や、どう対応したらいいかといったことなどを、言葉で伝えるだけではなく、動画や写真でも見ることによって、子供たちの記憶に残りやすくなる。子供のころからそうしたダイバーシティー(多様性の受け入れ)を理解していれば、何かの場面で役立つことにもなる。子供がやっていることを、大人が見習うこともできる。

きちんとボーナスが出て、生活の心配がない人たちがコロナ禍のルールを決めているのが、もどかしい。公平感や危機感を感じない、その場しのぎの対応の行政に期待が持てないので、身を守るためには自粛しかない。

「おうち時間」がまた増えそうだ。ウィズコロナの生活様式では、これまでできたことができなくなることも多い。コロナ禍で障害者やパラスポーツを学び、つねに制限や制約を抱えている障害者の気持ちを少しでも理解し、生活や行動を参考にしてみようと考える機会があってもいいのではないだろうか。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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