コロナ禍が「パラスポーツ」を学ぶ絶好機の理由 制限・制約を抱える体験が学びにつながる
オンラインにはリアルと違った良さがあることは、オンライン会議などでおわかりの方も多いと思うが、ネット環境さえあれば参加する人のいる場所を選ばない。今回も、東北から沖縄まで、全国のNECグループの社員親子約150人が参加した。
企画したNEC東京オリンピック・パラリンピック推進本部の伊藤直美マネージャーはこう話す。
「経済界でもスポーツや東京2020大会をきっかけに、共生社会を盛り上げていこうと考えています。その1つの目標が、パラリンピックの会場を満員にすること。新型コロナのこともあって、世の中のインフラ、心の持ちようが、障害になっていると感じました。
パラリンピックには力があり、(選手たちは)どんなことがあってもへこたれない。障害があっても乗り越えていく。ポジティブに考え、励まされることも多い。そういったパラアスリートの生の声を、ニューノーマルとなったリモートの形態で全国の社員に届けたいと思いました」
コロナ禍で制限されている気持ちと似ている
「コロナ禍」「オンライン」「子供と親」ということもあって、講師の山本選手は「親子で参加していただくので、自分の親との話を入れたほか、オンラインだからこそ双方向が大事と思って、リアクションを大きくしてもらい、何か答えてもらったら必ず返すことを心掛けました」と言う。
先天性の二分脊椎症で生まれつき足が不自由な山本選手が、子供のころ自転車に乗りたくて、父から「補助輪を1つずつ外しながらやろう」と言われて乗れるようになったエピソードや、水泳教室で「パラリンピックを目指さないか」と誘われ「それっておいしいの?」と聞いたこと、海外に行けると言われて小学校3年生のときに夢としたこと、パワーリフティングとの出会いなどを、2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックでの映像なども交えて話した。
その中で筆者の印象に残ったのが、コロナ禍で健常者が何かを制限されている気持ちは、障害者が、障害と感じてモヤモヤすることと似ているのでは?ということだった。思い出すと、緊急事態宣言下で移動自粛が「要請」という言い回しの「実質禁止」(緩和された際に解禁と表現された)となり、3密を避け、ソーシャルディスタンスを取り、出入国制限もあり、県またぎや国家間の移動もしにくくなった。
こうした「制約」をどう感じただろうか。人間は本来移動をする生き物なので、移動を制限されると、ストレスがたまり、人間らしい生活を阻害するといわれているそうだ。
障害者の中には、普段から移動に制約を受けている人が多い。車いすの山本選手は「(車いすで)5センチの段差を上れるか」「雨の日は傘を差すか」「車の運転はできるか」など、子供たちにクイズ形式で話しかけた。山本選手はこうした移動の制限に対し、さまざまな工夫で対処している。
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