ワクチンで逆に「感染が広がる」意外な可能性 重症化は抑えられるが、感染力低下は微妙
ファイザーは治験参加者の一部を対象に、Nと呼ばれるウイルスタンパク質に対する抗体を検査する予定になっている。ワクチンはこのタンパク質と関係がないため、N抗体を調べればワクチン接種後に被験者がコロナに感染したかどうかがわかると同社広報担当のジェリカ・ピッツ氏は話す。
モデルナも治験参加者全員の血液を分析し、N抗体を検査する予定だ。モデルナの広報担当コリーン・ハッシー氏によれば、「結果が出るまでには数週間かかる見込み」という。
ワクチンが生み出す悪質な拡散者
これまでの治験では血液のみが分析されてきたが、粘膜における抗体を検査すれば、抗体が鼻や口にも移動可能なのかどうかが確認できる。タル氏の研究チームは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの治験参加者から血液と唾液の両方の検体を得て、同一人物の血液と唾液で抗体レベルにどのような違いが出てくるのか分析する計画だ。
一方、最近の研究では筋肉内注射でインフルエンザワクチンを接種した人が鼻腔内に豊富な抗体を持っていたことが示された。バタチャリヤ氏はこの結果に勇気づけられていると話す。また、新型コロナ患者を対象にしたある研究では唾液と血液中の抗体レベルがほぼ一致していることもわかった。これは、血液中の強い免疫反応が粘膜組織も保護していることを示唆する。
他人に感染を広げるのは鼻や喉でウイルスが増殖した人に限られるとみられる。さらに、ワクチンを接種した人が感染後に症状を示さないということは、ワクチンがウイルス量の抑制につながった可能性もある。
しかし、各種研究の中には無症状者でも鼻腔内に大量のコロナウイルスを持っている場合があるとしているものもある、とアメリカ小児科学会の代表としてアメリカ疾病対策センター(CDC)の「予防接種の実施に関する諮問委員会」に参加するイボンヌ・マルドナード医師は指摘する。コロナウイルスで世界初の再感染例となった香港の33歳男性も無症状だったが、他者に感染させるのに十分な量のウイルスを保有していた。
ワクチン接種を済ませ、ウイルスを大量に保有しながら無症状となっている人は「誤った安心感を抱いている可能性があるため、実際にはある意味で一段と悪質なウイルスの拡散者になる」(マルドナード氏)。
(執筆:Apoorva Mandavilli記者)
(C)2020 The New York Times News Services
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