ワクチンで逆に「感染が広がる」意外な可能性

重症化は抑えられるが、感染力低下は微妙

これらの抗体の一部は鼻粘膜まで循環してきて、そこでウイルスを撃退する。ただ、抗体プールからどれくらいの量の抗体が、どれくらいの速度で動員されるのかはわかっていない。その答えが「不十分」ということであれば、ウイルスは鼻のなかで増殖し、くしゃみや呼吸によって他者に感染させる可能性が出てくる。

「これは競争だ。ウイルスの増殖のほうが速いか、免疫系の制御のほうが速いかの勝負になる」と、シアトルにあるワシントン大学の免疫学者マリオン・ペッパー氏は話す。「これはとても重要な問題だ」。

発症予防効果は高いかもしれないが…

こうした理由から専門家は、鼻の中に吹き付けるインフルエンザ用の「フルミスト」や経口ポリオワクチンのような粘膜ワクチンのほうが呼吸器感染症の予防に優れているとしている。

したがって、次世代のコロナワクチンはウイルスの主な侵入経路である鼻などの気道で抗体を誘導するものとなるだろう。筋肉内注射を行った後に、鼻と喉の粘膜で防御抗体を産生するブースターワクチンを投与する方法も考えられる。

コロナワクチンは重症化を防ぐ効果が高いことがわかっているが、これは必ずしも鼻腔内でのウイルス撃退効果を保証するものではない。コロナが重篤な症状を引き起こす肺は、鼻や喉に比べると循環抗体がはるかに到達しやすく、そのぶん防御も容易だ。

「重い病気を防ぐのが最も簡単で、軽い病気を防ぐのはより難しく、すべての感染を防ぐのが最も難しい」とアリゾナ大学の免疫学者ディープタ・バタチャリヤ氏は話す。「発症予防効果が95%とすれば、感染予防効果は間違いなくそれを下回る」。

それでもバタチャリヤ氏などの専門家は、ワクチンの感染抑制効果に期待している。ワクチンは鼻と喉にも効果を発揮し、他者に感染を広げなくて済むレベルにまでウイルス量を抑え込むとみられるためだ。

アストラゼネカは11月に治験結果の一部を発表し、ボランティアの被験者が自ら定期的にウイルス検査を行ったところ、一定程度の感染予防効果があることを示すデータが得られたとした。

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