外国人の人権は無視?知られざる「入管」の実態 2019年にはハンガーストライキによる餓死者も
「はっきりいえば、反発や波風を感じるほど、私たちの運動は世間に届いていません。欧米では、その時々の社会や政治状況に応じて、外国人の保護や歓迎に流れることもあれば、今のように外国人を排斥しようという動きが高まることもある。それだけ外国人を受け入れてきた歴史があるということです。
でも、日本では、残念ながら外国人は見えない存在にされています。技能実習生はひどい労働環境から逃げても、結局、働かなければ生きていけないから、不利な条件を呑んで仕事を続けざるを得ません。
もちろんちゃんとしている人もいるけれど、日本の零細、中小企業の経営者が、昔と変わらず、外国人を安い労働力と思っていることが一番の問題です。労働の対価として報酬をきちんと払い、互いに人間同士としてちゃんと向き合わなければ、日本はますますダメになると思います」
多くの収容者は心身ともに疲弊している
強制退去令に応じない人たちは長期収容する。入管の方針によって仮放免はなかなか出なくなり、収容がいつまで続くか、先の見えない状況下で、多くの収容者は心身ともに疲弊している。
同じ収容者に時間を置いて会えば、その多くは前回の面会時よりも疲労や諦念の色を濃くしている。そんな彼らと何を話せばよいか。面会をしたことがある人なら、少なからず考えることだろう。
この四半世紀、田中さんは収容者とどう向き合ってきたのか。
「まずは体調がどうか、何か変わったことはないかを尋ねます。知り合いに会いに来たという感じで、「今日は何を食べた?」「入管のこれはおいしくない」とか。結構つまらない話もしますね。難しい話をすることもあるけれど、中にいる人も、政治のこと、宗教のことばかり考えているわけじゃないですから。
6カ月も収容されていれば、精神的なダメージは大きく、多くの人が心の問題を抱えています。刑務所なら作業時間があり、対価として報酬もありますが、収容所ではそれもありません。作業や仕事を取り上げられ、ただ虚ろにテレビを見ていたら、人格が壊されてしまいます。手や頭、身体を使って人の役に立つこと、そういうすべての機会を奪われることは、人間にとって最悪のことなんです」
経営する喫茶店の定休日である水曜日、田中さんは午前7時20分に自宅を出て、隣町の牛久へ向かう。
「行きは途中で面会希望者を拾いながら、今日は誰に会ってどうしようかと、移動中に考えるけれど、牛久入管で聞いたことは、あまり家には持ち帰らないかな。つくば学園都市は、植栽や周囲の景色がとてもきれいなので、帰りはその風景を見ながら、心をマイナーチェンジしていきます。私もいい年なので、家に戻るとテレビを見ながら、明日のランチのメニューをどうするか考えているうちに、くたばって寝ていますね(笑)」
1952年茨城県つくば市生まれ。「牛久入管収容問題を考える会」代表。つくば市内で喫茶店を経営しながら、1995年から週に一度、東日本入国管理センターで収容者への面会を続け、収容者の人権を尊重するよう、ほかの団体とも連携しながら、入管に申し入れをおこなっている。2010年に東京弁護士会人権賞を受賞。
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