外国人の人権は無視?知られざる「入管」の実態 2019年にはハンガーストライキによる餓死者も
全件収容主義とは、在留資格がない人や超過滞在者など、入管法に違反していれば、難民申請中といった個別の事情や、その人が逃げる可能性があるかどうかを考慮せずに収容してよいとする入管側の解釈を指す。
収容期間の上限が定められていないことを含め、こうした入管の態度が招いた長期収容は、収容者の人権を無視した行為といえる。これに対して、国連人権理事会の「恣意的拘禁作業部会」は、日本の入管収容は、国際人権法に違反しているという意見書をまとめている。
2019年に牛久入管で始まったハンストについては、マスメディアでも報道されていたので、耳目に触れた人も少なくないだろう。
届け出が義務化された翌年の2008年に約49万人だった外国人労働者の数は、2019年には約166万人と、10年あまりで3倍以上に増えている。それにもかかわらず、日本では、多くの人がすぐ隣にいる外国人の存在を見ていないようだと田中さんは指摘する。
「国は就労目的とわかっていながら、留学生を増やしてきました。学問を一生懸命やっている人ももちろんいるけれど、留学時にした借金を返済するために複数のバイトを抱え、授業中に居眠りしている人も少なくありません。でも、彼らの労働という下支えによって日本の社会は回っているんです。
この辺りの農産物直売所で売られている野菜をつくっているのも、技能実習生や特定活動ビザの人たちです。茨城県にしろ群馬県にしろ、彼らの労働によって農業は成り立っています。今治タオルも、メイド・イン・ジャパンのファッション・ブランドも、技能実習生が厳しい労働条件下でつくっていました。
日系ブラジル人、日系ペルー人たちも、バブル期には定住者ビザで呼び寄せられ、その後、リーマン・ショックで景気が悪くなったら解雇されて、また人手が足りなくなったからと、国はさまざまな優遇措置さえ設けて来日を促しています。
そして現在、コロナ禍の不況で仕事がなくなり、収入が途絶え、アパートや寮から放り出されている。みんな本当に、どうやって生きているのか。日本はよくよく考えなければいけないし、呼び寄せた側、つまり国や企業は責任を持って、彼らの生活を保証するべきだと思います」
「外国人は見えない存在にされている」
166万人という数字が示すように、日本の多くの産業分野で外国人労働者が必要とされていることに疑いの余地はない。だが、事情はどうあれ、「現行法に違反しながら、この国にいる彼らに弁解の余地などない」と彼らを取り巻く状況や生きる権利に目を向けない人の声のほうが大きい。
残念ながら、それが日本の現実だ。
そんな中、入管の方針や対応に意を唱え続ける牛久の会の活動は、少なからぬ反発を受けているのではないか。だが、田中さんは、こちらの懸念に対してこう答える。