36歳で寝たきり妻の介護する男性が幸せなワケ 子どもが3歳と0歳のとき、妻が脳出血で倒れた

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10月、松林さんの強い要請から、バリウムなどの造影剤を含んだ食べ物をX線撮影した状態で食べ、正しく飲み込めるかを評価する「嚥下造影検査」をすることになった。

妻は、食べる訓練をほとんどしたことがない状態で検査を受け、無事合格。おかゆを食べる訓練を開始した。

ベッドで上体を30度程度に起こし、自分でスプーンを使っておかゆを口に運び、ゴックンと飲み込む動作を繰り返す。本人の体調や意識レベルによってばらつきはあるが、3週間後には100gのおかゆを時間内に半分以上食べられるようになった。

リハビリ病院の退院期限が迫るなか、11月になるとペースト状のおかずが加わったが、11月中に朝昼晩の食事を口から食べるという目標を達成することはできなかった。そのため医師から、「次は療養型病院か自宅かの選択となるが、療養型病院は胃ろうを造らないと受入先がない」と言われる。

「患者1人の食事に看護師がつきっきりになることは不可能だし、誤嚥による肺炎や死亡のリスクも伴います。高い人件費をかけてまで、リスクの高い仕事を受け入れられないことは理解できますが、私は妻が少しでも口から食べられるよう、訓練を続けさせてあげたいと思いました」

松林さんは必死に調べた。結果、幸運にも口から食べる訓練に力を入れている病院を見つけ、転院が決まる。

口から食べる訓練は、食事を摂る体勢が重要だ。上体を30度程度に起こすのは転院前と同じだが、身体の左右や頭の後ろ、左肘の下などにクッションやタオルを挟み、安定して食事ができる姿勢を作る。食べ物を妻に見せ、スプーンを持たせてその手を支え、「口開けて」「ゴックンして」と声をかけながらひと口ずつ食べさせていく。

妻は転院初日から約50分で8割程度食べることができ、松林さんと義母は「訓練すればきっと以前のように食べられるようになる!」と喜んだ。

2日後、妻は1日3食口から食べられたため、経鼻栄養はやめ、口から食べる方針へ変更。ただし、看護師が1日3食介助をすることは難しいため、松林さんと義母でも食事介助ができるよう、介助のスキルを学ぶことになった。

在宅介護への壁

2017年1月、松林さんは仕事に復帰。そのタイミングで実母を家事要員として呼び寄せた。

3月、妻は自宅近くの病院へ移ることに。義母は転院前におかゆゼリーやミキサー食の作り方を習得した。

「口から食べることで脳への刺激が増え、妻の表情が引き締まったように感じました。胃ろうを選択しなくてよかった。口から食べる基礎を作ってくれたことに感謝の気持ちでいっぱいでした」

松林さんは、3カ月後に在宅療養を視野に入れていた。

4月。妻を在宅で看るには、おむつ交換や着替え、食事の介助、口腔ケア、入浴、清拭、褥瘡(じょくそう)予防のため夜中の姿勢変更などが必要になる。これらの作業を家族で分担し、不足する部分はヘルパーを頼む。

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