コロナ対策優等生の台湾でワクチン開発に遅れ 責任回避の当局、国民に信頼されない製薬業界

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アディミューン開発のワクチンは、2020年6月の時点で臨床実験(治験)に進める段階だったそうだ。通常、ワクチンは市販化の前に3つの段階の臨床試験を行う。アディミューンは6月19日に衛生福利部(厚生労働省に相当)へ第1ステップである第1相臨床試験実施の申請を行った。だがそれが承認されたのは申請から2カ月も経った8月21日。しかも条件つきの仮承認で、正式な承認を得るためにさらに手続きが必要だった。その結果、実際に臨床試験が開始されたのは8月末のことだったという。

第1相臨床試験が終了した後、アディミューンは11月20日に第2相臨床試験の申請を行った。この審査にも約2カ月を要するという。そうなると第2相に続く第3相臨床試験も当初の予定から大幅に遅れる見通しだ。このままでは、アディミューンの臨床試験がすべて終了するのは2021年下半期になるだろう。つまり台湾で台湾産のワクチンが実用化されるのはどんなに早くても2021年の第3四半期、もしくは第4四半期になるのだ。

責任を取りたがらない台湾当局

一方、海外では効率よくことが進んでいる。たとえばファイザーとドイツのビオンテックによる共同開発グループは、第1相臨床試験で同時に4種類のワクチンを用いた。そして4種のなかから最も効果があったワクチンをもって第2相臨床試験に進んだのだ。しかも、包括的で完全な試験を行うために、第1相の試験はワクチンの使用量を高用量、中用量、低用量に分け実施したという。異なる用量で同時に臨床試験を行うことで、より効率よく、迅速に必要な結果を得ることができるのだ。

これ以外にも迅速なワクチン開発のために、欧米諸国は新型コロナウイルスワクチンの承認審査のスピード化を進めている。一般的に、ワクチン開発では動物実験を経てヒトへの臨床実験に進むが、モデルナは動物実験を行わずに臨床試験を開始した。

また、第2、第3相臨床試験を同時に行うことでワクチン開発のスピードを高めている国や企業もある。全世界が「世界初」の新型コロナウイルスワクチンの完成に向けて取り組んでいたのだ。ワクチン開発は各国の科学技術の競争にして、メンツ争いの場でもあったかもしれない。

なぜワクチン開発競争で台湾は世界に遅れをとってしまったのか。それは政府が保守的な態度をとっているためだ。台湾において新薬の審査を行う機関・食品薬物管理署(TFDA)は責任を負いたがらない傾向にある。

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