コロナ対策優等生の台湾でワクチン開発に遅れ 責任回避の当局、国民に信頼されない製薬業界

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台湾でワクチン開発が進まない3つ目の理由として挙げられるのが戦略だ。ワクチン開発が当初の計画から大きく遅れてしまった台湾は、すでに国際競争において不利な立場となった。このままでは台湾産ワクチンは販売されても見向きもされないことになるだろう。だが台湾に勝機がまったくないわけではない。それは英オックスフォード大学とアストラゼネカの例が大変参考になる。

前出の通りファイザー/ビオンテックグループとモデルナのワクチンの有効性は90%以上だ。一方、英オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発したワクチンの有効性は70%である。オックスフォード/アストラゼネカのワクチンは、開発当初からその有効性が他社には及ばないことは知られていたが、別の優位性があるため注目されている。

同グループ開発のワクチンは2~8℃と室温もしくは一般の冷蔵庫での保管が可能なのだ。一方、他社のものは-20℃~-70℃の冷凍庫での保管が必要だ。オックスフォード/アストラゼネカのワクチンは保管の点で明らかに優位性があると言える。

途上国市場に目を向ける台湾メーカー

さらに価格面でも違いがある。オックスフォード/アストラゼネカのワクチンは1本4ドル(約416円)と低価格に抑えられている。一方、ファイザー/ビオンテック社のワクチンは1本20ドル(約2080円)、モデルナは1本33ドル(約3434円)だ。オックスフォード/アストラゼネカグループのメインの販売先は開発途上国である。同時に同グループは日、米、英、韓、インドなど各国政府や製薬会社とライセンス生産契約を結ぶ戦略をとった。ライセンス生産することで迅速な量産体制を取ることができ、さらに中低階層市場を攻めることができるのである。

途上国市場への注目は台湾でも始まった。ワクチンメーカー「メディジェン・ワクチン・バイオロジクス (高端疫苗生物製剤)」によると、実際の国際市場の動きを見ると大手企業がワクチン開発に成功した後も、ワクチンは開発途上国までは行きわたらない恐れがあるそうだ。やはり台湾企業が注力できる市場はここだというのだ。

そこでメディジェンはベトナムで臨床試験を行い、すでにベトナムやマレーシアと将来的なワクチンの供給についての契約も結んだという。アディミューンも台湾貿易センター主催の海外との商談会に参加したり台湾と国交のある国へ参入を始めたそうだ。この世界ワクチン戦争に取り残されないためには、熾烈な競争が起こっている市場で自国や自社の立ち位置を知り、その中から新たな知見を得る必要があると言える。

(台湾『今周刊』2020年11月27日)

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