コロナ対策優等生の台湾でワクチン開発に遅れ 責任回避の当局、国民に信頼されない製薬業界

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具体的に言えば、ワクチンによる健康被害が発生してもそれが台湾製ではなく米FDA(アメリカ食品医薬品局)承認のアメリカ製であれば、台湾の官僚の責任ではない、ということだ。TFDAにはこのような考えが根強く存在し、この姿勢が台湾のワクチン産業の発展を鈍らせているのである。

TFDAは市民の健康と安全を守る機関であり、その判断にミスは許されない。しかし新型コロナウイルスの流行という緊急事態においては、ワクチン開発の審査や開発への補助金交付の拡充など柔軟な対応策を打ち出すべきではないだろうか。この点は議論の余地があると言えるだろう。

さてここで、台湾のライバルと言える韓国の動向を見てみたい。この新型コロナ危機のなか、韓国は最もビジネスを成功させた国だ。新型コロナ検査キットで知られるSDバイオセンサー社がよい例である。

同社は3月頃に検査キットが韓国で承認された後、いち早く世界市場への供給を開始した。そして今、韓国は新型コロナウイルスのワクチンと治療のための新薬の開発においてもすでに列強入りしている。特にワクチンの開発スピードは相当なもので、バイオ医薬品製造大手・セルトリオン社は、新型コロナウイルスの予防と治療が期待される抗体医薬品の開発に力を注いでおり、この分野での世界のトップランナーとなった。

台湾で信用されない台湾の医薬製品

韓国がコロナ禍でビジネスチャンスをつかんだ背景には、「世界初になりたい」という野心と、国際舞台において「大国の地位を得たい」という思惑があったと言える。反対に、台湾は慎重で、問題が起こることを嫌う傾向にある。使用の際に生命の危険がない検査キットの承認でさえ保守的な姿勢を見せていた。

確かに過去には韓国政府の拙速な判断により問題が起きたこともある。しかし、この政府の姿勢の違いが韓国の台湾に対するリードを広げている最大の原因であることは明らかだろう。

台湾産の医薬品に対して保守的なのは政府だけではない。使用する台湾の医療機関、医師、市民は台湾産のものを信用しない傾向にある。これが台湾でワクチン開発が進まない2つ目の理由だ。

ある業者は各国の国産の医薬品について「日本人は政府が認可したら使う、韓国人は政府の認可前でも使う、台湾人は政府が認可しても使わない」と話す。これは一種のジョークだが、台湾企業にとってはまったく笑えない話だ。

台湾人の認識を変えることが台湾のバイオテクノロジー産業が長年抱える大きな課題だと言える。現在、検査キットなど台湾企業が開発した新型コロナ関連の医薬品が承認を得て市販されているが、実際に台湾の現場で見かけることは少ない。台湾の医薬品メーカーは輸出の際に相手国の企業から「品質はこんなに良いのに、なぜ台湾の医療機関では採用されていないのか。まさかデータに虚偽があるのではないのか」とあらぬ疑いを欠けられることもあるそうだ。

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