新たな起業家「ディーパー」は地方の救世主か!? 地域を想い人間関係を重視する第4の経済主体

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第4の経済主体である「ディーパー」の存在は、地域活性化をもたらす起爆剤となりうるのでしょうか(写真:buritora/PIXTA) 
地方には4つの経済主体がある。既存の自営業・中小企業、全国区の大企業、ベンチャー、そして「ディーパー」という起業家だ。ディーパーとはどのような存在なのか。地方経済の中でどのような役割を担っているのか。
前回に続き、『イノベーターはあなたの中にいる 創造的起業家に変わる体験のデザイン』を上梓した野村総合研究所の齊藤義明氏と、楽天の創業期から全国各地のネットショップ出店者と関わる楽天大学学長の仲山進也氏が語り合った。

地域のために事業を始める起業家「ディーパー」

齊藤義明(以下、齊藤):全国から集めた100人の革新的経営者と地域の起業家人材を掛け合わせ、その地域に新しい事業を生み出す「イノベーション・プログラム」を5年間やってきました。

『イノベーターはあなたの中にいる 創造的起業家に変わる体験のデザイン』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

各チームの事業を見ていると、全国展開を目指すような規模を追わないベンチャーがたくさん出てくることに気づいたんです。彼らは従来の中小企業経営者や自営業者ではなく、ましてや大企業や行政に勤める働き手でもなく、野心的なベンチャー経営者でもない、未知の存在でした。

彼らは、純粋に地域の魅力を深めることにとても関心があって、二言目には「わが地域の魅力を」と言う。これと同時に、自分を深めていくことにも興味があるのです。地域を耕し、自分を耕すことで、自分のアイデンティティーを表現したい人たちです。

この小さな起業家たちを何と呼べばいいのだろうと考え、スケールではなく深く掘り下げていくという人たちという意味から、「ディーパー」と名付けました。

仲山進也(以下、仲山):ディーパーの共通点って、どんなところですか?

齊藤:今回上梓した『イノベーターはあなたの中にいる 創造的起業家に変わる体験のデザイン』(東洋経済新報社)にも書きましたが、いくつかの共通点があります。

1つ目は、成長や規模拡大や創業利潤の獲得よりも、地域の魅力や文化を耕すことに主たる興味を持っているという点です。ベンチャーはスケールを追求するけれども、彼らは地域の魅力を掘り下げ追求していくことに意義を感じています。

2つ目は、彼らは自分の夢や楽しさ、生きがいを大切にします。起業を通じて自分のアイデンティティーを表現することに関心があり、自己満足を肯定するんですね。東京にいる私たちは、「それは自己満足じゃないか」と言われるとネガティブに受け取ってしまいますが、彼らは「自己満足で何が悪い」「生き方って最終的には自己満足でしょ」といった感覚を持ち合わせているのです。

3つ目は、コミュニティー志向、人間関係志向であるということです。従来のベンチャーは「俺1人で打って出て、世界を変えてやる」みたいなところがありましたが、彼らはそんなところには関心がない。むしろ地域やコミュニティー、人間関係を大事にするというところに関心があります。それに対して「なぜ?」と聞くと、「だって、それが巡り巡って自分の幸福につながるから」と答える。そういう感覚なんです。

最後は、1つひとつは小規模ですが、彼らは相互につながっていて、ネットワーク(アメーバ)的な動き方をすることです。単独の事業体としてだけではなく、相互に組み合わさって事業をつくり出すようなことが得意です。

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