新たな起業家「ディーパー」は地方の救世主か!? 地域を想い人間関係を重視する第4の経済主体

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仲山:僕は自己満足によって他者に喜んでもらい、結果的に幸福になる状態を「自己中心的利他」と呼んでいます。やりたくて得意なことをして価値を生み出すと、お客さんが喜んでくれるから、楽しくてもっとやりたくなるのが「自己中心的利他」です。そういうスタンスの人がネットワーク状につながっているコミュニティーは、化学反応が生まれやすいですよね。

ディーパーは「コネクター」であり「アメーバ」である

齊藤:どんな人たちか、具体例を挙げてみましょう。土木建築業の後継者が始めた「KOYA.lab」という事業があります。北海道十勝の絶景ポイントに宿泊していただくために、眺望がすばらしい丘や星空がきれいな場所などに小屋を車で運んで設置するという移動型の新しい宿です。ただ、宿泊業というとさまざまな規制がありますので、事業形態としてはレンタカーサービスになります。

齊藤義明(さいとう よしあき)/野村総合研究所 主席研究員 2030年研究室長。北海道大学卒業。1988年野村総合研究所入社、ワシントン支店長、コンサルティング本部戦略企画部長などを歴任、現在はイノベーション・プログラムの開発者として全国を飛び回る。100人以上の革新者(イノベーター)たちと親密なネットワークを持つ。著書に『日本の革新者たち』(ビー・エヌ・エヌ新社)、『次世代経営者育成法』(日本経済新聞出版社)、『モチベーション企業の研究』(東洋経済新報社)など(写真:筆者提供)

その絶景ポイントに地域の食材が運び込まれる仕組みをつくって、絶景を見ながら十勝のいちばん美味しいものを食べてもらう。彼らにとって十勝でいちばんの宿泊とは何かと聞くと、「何もないところで十勝の星空を見ながら肉や野菜を焼いて食べる。そして朝起きたら、その日の朝に畑でとれた新鮮な野菜や卵を料理して食べることだ」と言います。まさにそのような体験をしてもらうサービスをつくったのです。

すると、また別の人が「サウナも魅力的だ」と言い出して、移動型サウナの事業を始めます。あるいは、「ビアバスも面白い」と言って移動型ビール事業を立ち上げる。このようにして付随するサービスが勝手に立ち上がっていくんです。地域のために事業をどんどん始め出すんです。

十勝のイノベーション・プログラムは、5期までで200人を超えるつながりができました。われわれは「ヨコ噴火」や「場外爆発」と呼んでいますが、プログラム開始時点では毎回10くらいしか事業が生まれないのに、それが終わってから、掛け算式にいろいろなことをやり出す傾向があります。先ほど申し上げた「編集的な事業創造」が自動的に起こり始めるのです。

仲山:コラボ企画が生まれたり、共創が起こると。

齊藤:そうです。1つひとつの事業は決して大きくはありません。ベンチャーキャピタリストからは「投資なんてできないよ」と言われてしまいます。しかし、地域を経営していくという観点から見ると非常に面白い。彼らは、自分の力で食べていけるけれど、人とつながるチャンスやコネクトをつねに探しています。事業を継続していくためには、規模が小さいからこそコネクトが大切だと考えているんです。

コネクターであり、アメーバでもある。そんな人たちが新しい地域を支える経済主体になってきていると感じます。彼らを、「ちっぽけな存在だ」「ベンチャー投資対象にはならない」と言って片付けてしまうのではなく、「地域の魅力づくり」という点から光を当ててあげると、ますます活躍してくれるのではないかという期待を持っています。

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