地方創生成功の鍵は穏やかなカオスを作ること 100人の革新者を発掘したプロジェクトの要諦
もはや地方と東京の差は感じない
仲山進也(以下、仲山):今回は「地方活性化」がテーマの1つということですが、近年、地方と東京との間にある差や境界はどんどんなくなってきていると感じます。
僕は20年前から楽天市場の出店者さんと一緒に遊ぶ係をやり続けてきました。多くは全国各地の中小企業なんですが、本気度の高い人の割合を考えると、都心よりも地方のほうが大きいです。さらには面白い商売をやっている人も地方のほうが目立ちます。
齊藤義明(以下、齊藤):なぜでしょうか。
仲山:理由はいくつかあります。地方の出店者は、実店舗を長年経営している人、親の会社を継いでいる人などが多いんですが、お店の前を通る人がどんどん減ってゆくさまを直接見ていますから、「このままではいけない」とネットショップに活路を見いだして始めるケースが多いです。だから本気になりやすい。
もう1つ、地方の中小企業の出店者は、経営者が自らネットショップの店長をやっているパターンが多いんです。すると、経営者本人が重要だと思ったことはすぐに対応できるので、機動力が高い。一方で都心の出店者は、サラリーマン店長が上から言われて運営しているケースも多くなるので、本気度やスピード感に差が出がちなのです。
だから、地方は不利だという話はあまりピンと来ていなくて(笑)。そもそもネットショップという形態は、どこに会社があっても全国にいる人たちがお客さんになります。そうやってオンラインを前提に考えると、地方と東京をそんなに区別する必要はないのかなと。地方にいながら自由に働けるチャンスが広がっていますので。
さらに、地方の出店者の中でうまくいっている人たちには、共通点があります。それは一度東京に出て仕事をして、家業を継ぐため地元に戻ったような人たちだということ。
彼らと地方から出たことのない人たちとを比べると、まず、働くという概念が違います。東京で働くことを経験した人たちは、たくさん働くことが普通だと思っている。一方で地方にずっといる人たちは、比較的のんびりしているんですよね。
齊藤:僕も仲山さんと同じく北海道出身なので、その感覚はわかります。
仲山:それと、地方から一度出たことで、その地域の価値や魅力を客観的に認識できるという点があります。例えば、僕の故郷の旭川にある出店者さんは、会社の近所で撮った何気ない雪景色をメルマガやブログにアップするんです。
北海道から出たことのない人だったら、まず撮らない日常の風景ですが、北海道外のお客さんから「すばらしい景色!」という反応がくるんです。この「自分にとっては当たり前すぎて見落としている価値」に気づけるかどうかは非常に大きいと思います。
ちなみにそのお店では、ちょっとした遊び心で「雪オークション」をやったことがあります。近所の雪を、雪だるま型の発泡スチロールのケースに入れてオークションにかけたんです。すると、落札した鹿児島県のお客さんから、「子どもが人生で初めて雪を見て喜んだ」というメッセージが寄せられたそうです。これは、ずっと北海道にいる人では出てこない発想だと思います。