「2030年ガソリン車禁止」政府が探る落とし所 政府基本案のたたき台から読めた日本の方針

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

こうして今、世間で大きな話題となっている政府による電動化シフト政策だが、現実的な目的はグローバルにおける日本の産業力強化にある。つまり、運輸・電機・エネルギー・ITなどの企業目線での議論が主体だ。

一方で、社会全体を考えた、これからのクルマや交通のあり方を同時に考えていく必要がある。というより、社会全体の動きを優先し、その一部でクルマの電動化を“活用する”ことが、これからの日本を考えるうえでの議論のあるべき姿だと思う。

変わるべきはクルマだけではない

今回の検討会・参考資料では、最初に「移動制約ゼロのための取組について」として、地域交通の現状と今後について紹介している。その次が「電動化」の記載である。

また、検討会の事務局資料(議論用)で、「『世界中の誰もが、便利で快適に、カーボンフリーのモビリティサービスを享受できる社会』を目指すには、以下の2つの変化が重要」として、「社会の変化」と「自動車の変化」を挙げている。

自動車というハードウェア・ソフトウェアについては、技術革新や規制対応などの目標が定まれば、日本がこれまで培ってきた知見や人材をフル活用することが可能であろう。他方、社会の変化については、地域社会の担い手不足や、継続な事業として成立させることの難しさなどあり、政府が目標と定めたからといって順調に社会課題が解決できるとは限らない。

永平寺町立 志比南小学校では、社会科見学の一環として自動走行車に試乗。この車両は2018年から実証を行い、2020年12月22日からは無人運転となり、遠隔で1人が3台を管理する有料化サービスを開始する(筆者撮影)

実際、筆者は福井県永平寺町の政策の協議に関わる永平寺町エボリューション大使という立場で、経済産業省の施策「スマートモビリティチャレンジ」や同省および国土交通省による「ラストマイル自動走行」の社会実証や社会実装を主として、国、県、周辺自治体、地元の企業や各種団体、そして住民の皆さんと社会変化について議論を進めているが、社会変化の現状と、これから町として進むべき道に関する情報共有をすることは、とても難しいと実感している。

今、日本で大きく動きだした、クルマの電動化シフト。社会全体の中での電動化のあるべき姿を、国民ひとりひとりが他人事ではなく、“わたくし事”として捉えることが大切だと強く思う。

桃田 健史 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事