「成長戦略」には、幻想を抱くな 1万5000円台回復の日経平均、今後はどうなる?

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日銀の金融緩和への期待後退が広がる中で、先に挙げた「小粒の政策」は、ほとんど「相場のノイズ程度」と見て良いだろう。そもそも、成長戦略と聞こえは言いが、ビジネスに疎い、「官の裁量」による「戦略なるもの」が、まともなビジネスにつながるのだろうか?そもそも、官の役割とは、「ビジネスを邪魔しない規制緩和」や、「公正でシンプルなルール作り」、という環境整備である。そして実際には、成長戦略の名の下で、衰退産業への補助金拡大や官業金融の肥大化が進んでおり、むしろ弊害の方が大きいと、筆者などはむしろ心配が先に立つのである。

確かに、「法人税率引き下げ」は、経済を刺激する点などから評価できる。だが、実際には税負担全体がどうなるかは見えない。また、施策が実施されたとしても、効果が出るのは、早くて2015年度からであって、現在の「消費増税の下押し圧力」を相殺するわけではない。ある程度は評価できるが、株価全体への影響は期待薄なのである。

結局のところ、消費増税のショックを本当に乗り切れるかどうかだけが、日本株市場にとって重要なのだ。それと、成長戦略などの小粒の政策はさほど影響しない、ということだ。日本株への投資において、利食いするか、上値を追うか、という重要な判断をする際に、当面は「アベノミクス」は材料としてあまり適切ではないだろう。逆に、成長戦略に幻想を抱くと、相場の先行きを大きく見誤る恐れがある。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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