タクシーの「配車アプリ」は日本で根付くのか? 最大手トップが語るサービス普及への道筋

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モビリティテクノロジーズの中島宏社長は、配車アプリの収益化に自信を示す(撮影:尾形文繁)
国内における市場創出の過程で、早くも苛烈な生存競争の様相を呈するタクシー配車アプリ業界。新型コロナウイルスの収束も見えない中、サービスを普及させ、将来の収益化につなげることは果たして可能なのか。DeNAの事業と日本交通傘下のジャパンタクシーが2020年4月に統合し、タクシー配車アプリの国内最大手となったモビリティテクノロジーズ(本社:東京都千代田区)の中島宏社長に聞いた。

問題だったのは“赤字の質”

――中島さんはDeNAの配車アプリ事業の責任者でもありました。ジャパンタクシーとの統合に踏み切った背景を改めて聞かせてください。

海外で普及したライドシェアのアプリビジネスを例にとると、中国のDiDi(滴滴出行)や東南アジアのGrabといった企業は、自分たちのマーケットでサービスを普及させ、今のポジションを築くまでに数千億円もの資金を投じている。一方、われわれがDeNA時代に出していた事業赤字はたかだか数十億円レベルで、額としては想定の範囲内だった。別に赤字が怖くて統合したわけではない。

むしろ問題は赤字の質だった。本当はアプリユーザーやタクシー会社、ドライバーのためにビジネスをしないといけないのに、当時は(割引クーポンの配布など)目先の競合対策に多額のコストを費やす状況だった。それでは配車アプリのビジネスが日本で健全に育たない。利便性の向上など、もっと有意義な部分にお金を使いたかった。それが再編を考えた一番の理由だ。

再編相手がジャパンタクシーだったのは、DeNAの南場(智子)会長と日本交通の川鍋(一朗)会長が知り合いだった縁もあるが、非常にいい組み合わせだったと思う。ジャパンタクシーはタクシー業界との関係性が深く、DeNAのMOVはアプリの使い勝手といったところが強かった。実際、双方の補間関係がうまく働いて、ドンピシャではまっている。

――4月の統合と同時に、国内で新型コロナの感染が広がりました。タクシーの稼働が大幅に減り、配車アプリ事業への影響も相当に大きかったのでは?

人の移動が減ってタクシー業界は大きな打撃を被った。一時はタクシー業界の乗客が前年の7割減にまで落ち込み、配車アプリも同じくらい利用件数が減った。ただし、足元の状況を見ると、そこから大きく状況が変わっている。

タクシー業界自体はまだ前年の水準までは戻っていないが、当社の配車アプリ利用件数はコロナ前を超えている。コロナでいったんは利用者が減ったものの、その後、急速にアプリユーザーが広がっているからだ。コロナ前の配車アプリ利用率はタクシー利用全体の2%程度だった。それが今では7%前後にまで上がっている地域もあるほどだ。

――なぜ、短期間でそんなに変化が?

ユーザーにも話を聞いたが、人混みや人との接触を極力避けたいといった意識が広がっていることが要因のようだ。配車アプリを使えば車の位置が画面上でわかるので、多くの人がいる外で待つ時間を減らせるし、運賃の支払いもアプリ上で完結して現金のやり取りをしなくて済む。この2つが大きな理由だと分析している。つまり、コロナをきっかけに、タクシーの利用のされ方が大きく変わり始めたということ。この流れは今後も変わらないと思う。

東洋経済プラスの短期連載「配車アプリ 熾烈なるサバイバル」では、この記事の続きを無料でお読みいただけます。この記事と合わせて2本の記事を配信しています。

①【総論】「タクシー配車サービス」覇権争いの行方
②【インタビュー】配車アプリ最大手トップが語るタクシー業界の未来
中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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