酒を飲みすぎる人に知ってほしい減酒のススメ 完全にやめるのでなく抑制して付き合っていく

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「日々の目標を達成できたかどうかは、日記につけてもらって確認します。やっぱり飲酒量の上限を守れずに飲みすぎる日もありますし、そういうときは日記をつけにくい。それも折り込み済みで、外来でそのときの状況を振り返ってもらうこともあります」(樋口さん)

目標を達成できない場合は、その理由がどこにあるかを受診者と医療者が一緒に考え、目標を下げたり、違う減酒法を考えていったりする。

薬物治療は?

一方の薬物治療は、飲酒量低減薬のナルメフェン(セリンクロ)が2019年3月に保険承認された。ヨーロッパには7年以上前からあった薬で、今は40カ国以上で使われている。日本では、これまで断酒のための薬(抗酒薬や断酒維持の補助薬など)はあったものの、減酒薬はなかったという。

アルコールを飲むと、脳内では快楽の刺激経路の一部をなすオピオイド神経が活性化され、これにより飲酒欲求が高まる。ナルメフェンは、オピオイド受容体に作用して飲酒の欲求を抑え、飲酒量を減らす薬だ。飲酒をする1~2時間前に飲む。

その効果について樋口さんは次のように話す。

「この薬を飲むと、飲みたいという欲求が薄らぎます。また人によっては、飲んでいる途中で『もう、いいや』ってなるようです。ただ、毎回そういう状態にはなるわけではなく、目標量を超えて飲んでしまうときもあって、トータルにみて飲酒量が下がるという感じです」

この減酒治療のいい点は、その効果が飲酒量の減少によって飲酒問題がなくなることにとどまらないところだ。目覚めがよくなった、頭がスッキリしている、胃腸の調子がよくなったというような体調の改善や、健診結果がよくなった、生活習慣病が改善したといったプラスアルファの〝ご褒美〟もあるという。

樋口さんによると、現在、減酒外来を設けている医療機関はクリニックなども含めて増えており、従来の専門とする精神科しかできない治療から、内科でも扱える身近な治療となってきている。

将来的には、地域のかかりつけ医が主に薬物治療を担い、カウンセリングなどの心理社会的治療は専門機関で受け持つ「病診連携」を目指す。高血圧や糖尿病治療とあわせて減酒治療ができるようになれば、もっと診療が身近になる。

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