酒を飲みすぎる人に知ってほしい減酒のススメ 完全にやめるのでなく抑制して付き合っていく

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対象となるのは依存症の人たちだけではなく、「飲み会で羽目を外す」「飲んだ後に記憶を失う」など、お酒でしくじったことが何度かあって、「そろそろ酒の量を減らしたほうがいいのかなぁ」と思っている人や、健康診断の結果で節酒が必要と言われた人なども含まれる。いや、むしろ「酒との付き合い方を改めたい」人にこそ向いているかもしれない。

減酒治療は2019年に発行された「新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン」の改訂版で初めて明記されたが、樋口さんのいる久里浜医療センターでは、2017年4月から減酒外来(AHRP)を始めている。

「外来には明らかにアルコール依存症が疑われる人だけでなく、依存症という病名がつかないような、酔い方に不安を感じる人もけっこう受診されていますね。なかには、『普段はほとんど飲まないけれど、飲むと酒癖が悪くなるから』と、相談に来られた方もいます」

と樋口さん。実際、こういう人たちが減酒治療をすると達成率が高い。

飲酒問題も早期発見・早期治療が有効

「ほかの病気と同様、飲酒問題も早期発見・早期治療が有効だということでしょう。飲酒を隠す、依存を否定する傾向が強いアルコール依存症の人たちとは違って、こういう人たちは飲酒問題が軽度であることに加え、飲酒に対して問題意識を持っている。これも大きいと思います」

では、実際、減酒治療ではどんなことが行われているのだろうか。

治療の柱は、カウンセリングなどを中心とした心理社会的治療と薬物治療。もちろん通院治療となる。

従来型の治療のやり方と大きく違うのは、医師など医療者が主導権を握らないというところ。飲酒量の目標(1日または1週間の飲酒量の上限)を決めるのは、あくまでも受診者側だ。

酒量を減らす方法もこれといった決まりはない。外来で提示された、いくつかの案をもとに、本人が実現できそうな方法を選んでいき、医療者はそれを支援していく(もちろん、必要な場合には断酒を勧めることもあるが)。

その案とは、「休肝日を作る」「アルコール度が低い酒を飲む(薄めて飲む)」「一口飲んだら必ずテーブルにグラスを置く」など、誰でもできそうなことばかりだ。ただ、そこから発展して、「常連のバーがある道は通らない」「コンビニには寄らない」といった案を提案してくる受診者もいるそうだ。

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