あと50年で「平均寿命」が33年も延びる理由 健康長寿を可能にする科学とテクノロジー

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しかしここでは控えめに見積もって、これらを全部合わせた結果として健康寿命が10年延びると仮定しよう。

また、老化が「避けて通れない人生の一部」などではないことが受け入れられれば、皆もっと自分の体に気をつけるようになるのではないだろうか。少なくとも私はそうだし、友人や家族のほとんども同様のようだ。

私自身、バイオモニタリングなどのテクノロジーを試すことに決めた時点で、すでに自分の変化をはっきりと感じ取っていた。食事のカロリーを前より抑え、動物性アミノ酸を減らし、もっと運動し、暑さや寒さの中で活動することで褐色細胞を増やそうとするようになったのである。

こうした対策は、社会的・経済的な地位がどうあれ、ほとんどの人が実行できるものだ。しかも、それで活力が増すことには十分な研究の裏付けがある。食事に気をつけながら活動的に暮らせば、健康寿命が10年延びると期待しても決して無謀ではない。

だが、念のためにそれを半分にして、こうした自己管理から得られる健康寿命を5年としよう。これで合わせて15年だ。

控えめに見積もっても113歳

さらに、サバイバル回路を活性化して、長寿遺伝子を働かせるような分子を摂取すると、動物実験では健康寿命が10〜40%延びることが確認されている。しかし、ここでも大事をとって10%と考え、私たちの人生に8年が追加されるとする。ここまでの合計は23年だ。

分子の摂取や、私の教え子が現在マウスで試しているような遺伝子の改変を通して、自分のエピゲノムをリセットできる時代はあとどれくらいで来るだろうか。薬やワクチンで老化細胞を除去できるようになるには、あと何年かかるだろう。

遺伝子改変を施した家畜の体内で臓器を丸ごと育てたり、3Dプリンターで臓器を印刷したりして、それを私たちが移植できるようになるのはどれだけ先だろうか。

おそらくは20年といったところではないかと思われる。30年かもしれない。いずれにせよ、今いるほとんどの人間の寿命が延びて、長くなった人生が終わるまでには、このうちのどれか、もしくはすべてが実現していることが十分に期待できる。

実際にそういう時代になったら、寿命はどれだけ延長されるだろうか。最大で数百年が追加されてもおかしくはないが、ここではたったの10年ということにしておきたい。それで合計33年である。

現時点で、先進諸国の平均寿命は80歳を少し上回るくらいだ。そこに33年を足してみよう。答えは113歳である。こういった変革を拒む人が大多数を占めたりしない限り、それが控えめに見積もった未来の平均寿命だ。

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