石油の異端事業を世界へプロデュースした男 ソーラーフロンティア社長 玉井裕人(下)

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手探りしながらの成長

三宅:そのために玉井さんが社長に就任されたと。

玉井:そうじゃないと意味がないと思っています。石油ビジネスは、私は30年以上、会社は100年以上手掛けていて、すべてが当たり前のように動いていきます。それに対して太陽光発電はまだすべてが手探りです。何がいいか悪いかもよくわからないし、競争は激しい。

三宅:確かにソーラービジネスには、技術だけでなく、政策にもビジネスにも戦略変数がたくさんありますね。しかもソーラーフロンティアはもはや業界のリーダーです。もしかしたらグローバルリーダーになるかもしれない。そうなると戦略設計や打ち手はすごく難しくなりますね。今まで誰もやっていないことをやる、つまり線路を敷かないといけないわけですから。

玉井:そうなのです。世の中の普及を考えると、政策的な要素がとても強い気がします。電化製品なので、国によっていろいろ厳しい規格があるのです。海外のケーブルが安いからと買ってくると、被覆の厚みが足りないから日本では使えないとかね。新しい事業ゆえに、見えないところがたくさんあります。

三宅:その手探りの状態から成長しようと挑戦しているのですね。

玉井:そうですね。親会社の石油も絶好調というわけではないので、われわれがきちんとおカネを稼がなくてはいけません。悩みは尽きませんが、今の日本の電力事情の中で、少しでもいい電気を作って世の中に普及させようとしています。やっていることは絶対に間違っていないと思っています。これで社会に貢献していくと信じてやっていきます。

三宅:ソーラーフロンティアのモジュールでも使われているCIS太陽電池は、薄膜系太陽電池の中で変換効率が高いだけでなく、いろいろな強みがありますね。われわれも中国やインドでも、CISだと引きが全然違うという感触をもっていますが、海外展開についてはどう考えていますか?

玉井:今、仙台に新しい工場を造っています。生産能力は150メガワットと、規模は宮崎の工場より小さいですが、われわれが考えていることが実現すれば、世界トップクラスの製品を提供できるはずです。その技術を持って海外市場を見据えていきたいと考えています。米国ニューヨーク州でも、ニューヨーク州立大学ナノスケール理工学カレッジと、共同研究開発や生産を行う可能性について検討をしています。北米は有望なマーケットですし、ヨーロッパも一段落したものの、底堅い需要はあると思います。親会社のサウジアラビアとのつながりも生かせるでしょう。いろいろ思い巡らせているところです。

三宅:玉井さんはソーラーという新しい事業を手掛けていますし、過去にもいろいろな人と組んで新しいモノやシステムを作ってこられました。新しい事業は面白い反面、困難も伴います。普通の人は尻込みしてあまり手を挙げないと思うのですが、そのあたりはいかがでしょうか(笑)。

玉井:自分が面白いと思っているんでしょうね。私はエンジンの設計図面を引くような仕事には興味がないのかもしれません。むしろ目標を概念化して、実現するために何をどうすればいいのかを考えるのが、楽しみなのだと思います。

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