大学に進学する18歳人口も減少し始めている。ただし、出生数と18歳人口は18年のタイムラグがあり、現在の減少率はまだ緩やかだ。2010年のころの18歳人口は約120万人だが、2019年は117.5万人、2020年は116.7万人、2021年は114.1万人と、10年経っても5万人程度の減少にとどまっている。
18歳人口は少しずつ減っているが、大学生の数は逆に少しずつ増えている。2020年度の学部学生数は262.4万人で前年より1.5万人増えて過去最高だ(文部科学省『令和2年度学校基本調査速報』)。
若者の数は減っているのに大学生は増えている。つまり、大学に進学する若者の比率が高まっており、かつては大学進学していなかった層の学生までが進学し、相対的に質が低下している可能性が高い。この現象は「大学全入時代」と言われ、すでに10年以上前から「ゆとり世代」と絡めて指摘されていた。
現在の若者に関しては「Z世代」という言葉が使われている。しかし、学生の質を分析するために、少子化や世代論のような大きな議論が必要だろうか? もっと低い視線で採用環境の変化を見れば済む話だと思う。
売り手市場化も要因
2010年代後半のもっとも大きな採用環境の変化は、「就職・採用戦線の売り手市場化」だった。売り手市場なので、内定獲得が容易になった。学生生活で最もつらい経験は就活だが、あまり苦労しないままに内定を獲得し、翌年4月に入社する。つまり、学生の意識のまま社会人になってしまう。
キャリア論では人間がどういう契機で成長するかを論じるが、神戸大学を退官し、現在は立命館大学で教鞭を執る金井壽宏教授は、「一皮むける経験」が成長の契機だと記している。つまり、現在の実力より高いハードルを越えたときに一皮むけるのだ。
内定が得られず将来が見えない就活は苦しい一方で、成長の契機になりうる。リーマンショック(2008年)後、2010年代初頭の頃まで多くの学生は就活に苦しんだ。ところが、2010年代後半の新卒採用は売り手市場だった。楽な就職が強いキャリアになりうるのかというと疑問があり、多くの人事担当者が違和感を持っているようだ。
「実力はさておき、就活生も保護者もとりあえず“大手”という考えになってしまう風潮そのもの」(情報・通信・301~1000人)
「学生のレベル低下。実地の就業体験をもっと積むべき」(マスコミ・コンサル・300人以下)
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