苦労話や孤独感を語り続ける彼女たちから時に影のような暗ささえも感じます。そこにはアイドルとしての夢物語よりも現実を生きる1人の人間の夢物語として見せたいという彼女たちの意思がありそうです。
つねに沈着冷静なジスの「好きなことを仕事にできる人はそんなに多いわけじゃない。幸運に恵まれた人だけ」という言葉や、ムードメーカーのリサすらも「この先新しい若い世代に(人気を)取って代わられてもそれはそれで構わない。忘れないでいてくれればね」と話しているからです。
韓国系アメリカ人監督が選んだラストシーン
彼女たちの心情をうまく引き出しているのは監督の手腕も大きいはず。Netflixオリジナル作品『美味しい料理の4大要素』も手掛けた韓国系アメリカ人のキャロライン・スーが本作の監督を務めています。このドキュメンタリーに関わることになって、初めてK-POPの世界を知ったという監督の新鮮な視点が功を奏したのではないかと思うのです。
米最大手のエンターテインメント誌『Variety』のインタビューに対して、スー監督は「彼女たちがどのようにしてBLACKPINKになったのか、そしてそれが現在の彼女たちを作り出していることを伝えるストーリーにしたいと思ったのが最初の構想段階にあった」と語っています。
実際に彼女たちと会って話すと、予想していたものとは違っていた様子。「それがかえって面白かった。彼女たちはどうやって頂点に達したかというよりも、スタート地点にいると感じているのです」。このときのファーストインプレッションを大事にしたからこそ、彼女たちの心の内にまで入り込むことができたというわけです。
食事をしながら20年後の自分たちについて話しているガールズトーク満載のシーンがエンディングを飾っているのですが、実はこれが最初の撮影だったことも明かしています。「進化し続けるBLACKPINKのエンディングにぴったりだった」と話す監督の言葉に大きく頷けます。BLACKPINKの光の部分と、そして闇までもあえて映し出しているのは、それだけ世界で人気が確立し、自信の表れであることを見せつけられる作品なのです。
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