日本郵政、苦境の中で見えない「成長シナリオ」 株式3次売却のメド見えず、欠かせぬ成長戦略
たしかにEC(ネット通販)関係の荷物数の増加で宅配便市場は活況を呈しており、日本郵便にとって追い風だ。2020年3月期の日本郵便のゆうパック取扱個数は9億7446万個。前期比3.4%増と拡大している一方、日本郵便の足元の業績自体は低空飛行が続いている。
足かせとなっているのが2001年をピークに減少が止まらない郵便物だ。郵便物やゆうメールの取扱数量が大幅に減少したことで、2020年4~9月期の郵便・物流事業のセグメント利益は73億円(前年同期比74.8%減)にまで落ち込んでいる。
オーストラリアの物流子会社が重荷に
頼みの綱であるゆうパックも、EC関係の荷物をめぐる競争は激化しており楽観視できる状況ではない。宅配首位のヤマト運輸はメルカリやZOZOなどの大口顧客にEC向け配送サービス「EAZY」を提供し、荷物確保に向け猛攻勢をかけている。
アマゾンのデリバリープロバイダに代表される中小配送事業者も台頭する中、日本郵便としても「モノを運ぶだけではなく付加価値をつけなければいけない」(増田社長)としているが、具体策はまだ見えない。あるEC向け物流代行サービス企業の幹部は「今、日本郵便に配送を委託しているのも、単純にヤマトや佐川と比べて安かったからだ」と打ち明ける。
さらに日本郵便にとって重荷となっているのが、2015年5月に子会社化したオーストラリアの国際物流企業トール・ホールディングスだ。約6200億円を投じてトールを取得したが、経営を立て直せず、2020年4~9月期には営業損益(EBIT)で61億円の赤字を計上した。
11月には赤字続きのオーストラリアでの宅配事業の売却を進めており、「当面はフォワーディング事業(顧客に代わり輸送手段を手配する事業)の立て直しに注力する」(増田社長)方針だが、経営改善後の成長戦略については不透明だ。日本郵便の中堅社員からは「トールとのシナジーなんてない。経営もボロボロでどう活かせば良いのかまったくわからない」と自嘲する声もあがる。
決算と同時に新たに示した2025年までの新たな中期経営計画では、「不動産事業の拡大」や「新規ビジネス等の推進」を掲げた。前中期経営計画と変わり映えしない内容であり、子会社である日本郵政不動産は営業赤字続きだ。増田社長は「不動産事業は長期間かけて投資回収するもので、短期での収益確保は期待できない」と長期戦を覚悟しているようだ。
配当による株主還元も重要だが、企業にまず求められるのが成長戦略を描き、それを実現していくことだろう。保険などの不適正募集で失った顧客の信頼を取り戻すだけでなく、企業としての成長を描き出すことができるか。日本郵政の暗中模索はしばらく続きそうだ。
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