株式会社化する第一生命 変額年金で試される真価


 変額年金と既存商品とでは開発サイクルが異なるので、同じシステムに載せるとどうしても競合が起きる。これを切り離すことで、商品の製造が2ラインでできることになり、より整理もしやすい。そもそも、死亡保障を中心とする従来の保険商品は保険業法、投資商品に近い変額年金は金融商品取引法と、規制も異なる。システムや事務フローを明確に分離すれば、効率性・透明性を確保することも可能になる。 

出足好調に奮い立つも視界不良の悪環境

「お客様の反応もよく、予想以上に順調」と、フロンティアの高野茂徳社長は終始ホクホク顔だ。

設立から半年、銀行・証券会社など同社の変額年金を販売する会社は35社に達している。同じ07年10月に営業を開始した仏クレディ・アグリコル生命の場合、販社はりそな銀行と埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行の3社のみ(ともに08年2月末)。クレディ・アグリコルは、各銀行にオーダーメードで商品を提供していく戦略なので単純比較は難しいとはいえ、その差は歴然。変額年金で圧倒的シェアを誇るハートフォード生命が設立から7年経った現在、販売会社数が64社(同)であることを考えると、フロンティアの拡大スピードはかなり速い。

まだ設立半年ということで、新規契約高や保有契約高など、業績にかかわる数字をフロンティアは公表していない。だが、高野社長の表情を見るかぎり、予想以上に快調な滑り出しであることは想像に難くない。

高野社長自身、二十数年前、保険業界が日本に変額年金を初導入する際、変額年金そのものを研究するため保険審議会が組織した第1次プロジェクトのメンバーでもあった。それから20年、再びフロンティアの社長として変額年金にかかわることに、「強烈な運命を感じる」と感慨深げだ。

持論は「明るい保険をつくりたい」。死んだとき、病気になったとき、介護状態になったとき--。保険は本来、暗いイメージと切り離せないもの。だが、“生存リスク”という見方が浮上してくるようになって、「ひょっとすると、変額年金は明るい保険になりうるのでは」と思ったという。老後を楽しく暮らすために、資金は必要不可欠なのだ。

そのためフロンティアの商品設計の基本は、背伸びやムリをしないミドルリスク・ミドルリターン。単に利回りがよい、値上がりが期待できるというような売り方はしたくないという。「私が社長にとどまるかぎり、この方針を変えるつもりはない」と、高野社長は言い切る。

第一生命の斎藤社長は「高野社長は毎年2000億円ずつ積み増し、5年で1兆円、と言っているが、(販売活動を担う第一生命の営業現場の)スピリットはもっとはるかに高い」とその口調には力がこもる。

ただ、これまで新契約が2ケタで伸びてきた変額年金市場も、06年には大きく鈍化した。05年から一部の指導改正に伴い、引き出し保証型変額年金等の新商品が販売中止となったことに加え、元本保障がない変額年金商品のリスクが浸透したのが要因。06年下期にはそれらの影響も一巡し、07年上期からは再び上向いてはいるが、サブプライム問題に端を発した世界的株安が、投資商品として変額年金をとらえる消費者から敬遠される一因になっている。

フロンティアのつまずきは、第一生命の持ち株会社移行の行方を少なからず左右する可能性も否めない。大嵐の中の出航。まずはこのシケを乗り切る気力と体力が試される。
(筑紫祐二記者 撮影:梅谷秀司、引地信彦 =週刊東洋経済3月15日号)

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