株式会社化する第一生命 変額年金で試される真価
斎藤勝利・第一生命社長は、「これから株式会社化するかもしれない生保を傘下に収め、商品を共同開発するなど、効率性を追求することも考えられる」と、業界再編の可能性を示唆する。また森田富治郎会長も、「社員に向かって、『縮小均衡を前提とした経営をします』なんて宣言できるわけがない。成長のためには保険以外の金融業も視野に入れなければ」と強調する。
2010年の株式会社化を前に、第一生命は大きな三つの収益柱を構築しようとしている。それは、現在の収益柱である保障市場とアジア市場に加え、貯蓄市場、つまり変額年金市場で存在感を増すことだ。
変額年金市場は30兆~60兆円規模も
銀行窓販(バンカシュアランス)発祥の地であるフランスでは、銀行窓販の市場規模は欧州一を誇る。フランスで窓販が全面解禁されたのは84年。80年代には20%にも満たなかった銀行窓販のシェアは、その後20年で3倍、現在では60%超に達している。つまり生命保険の3分の2は、銀行や郵便局の窓口で販売されていることになる。
窓販のシェアが上がるにつれ保険市場自体も拡大、06年には家計における貯蓄の新規資金のうち、65%が保険市場に流入しているという。フランスでの市場拡大を牽引してきた立役者が銀行窓販、と言い換えることもできるのだ。
日本でも、02年からの一部窓販解禁で変額年金が販売可能となったが、その威力は実証済み。07年12月22日の全面解禁を機に、メガバンクをはじめ地銀でもガン・医療・終身保険の取り扱いを開始した。スタート時は苦戦しているが、今後、取り扱い行数が増えれば消費者の目に留まる機会も増え、市場そのものが拡大するのは必至だ。
06年の変額年金市場は約16兆円だが、米ザ・ハートフォード・ファイナンシャル・サービシズのラマニ・アイアー会長兼CEOは、「将来的には30兆~60兆円(2500億~5000億ドル)規模までは拡大する」と語っている。実際、日本の変額年金市場をめぐっては、今後もソニー生命と提携した蘭エイゴン、独アリアンツなど、巨大な外資系の新規参入組が待機している。彼らが満を持して参入してくるからには、それなりの成算があるはずだ。
そして、その成長市場を追求するために誕生したのが、07年10月1日に営業を開始した第一フロンティア生命(以下、フロンティア)である。フロンティアは、銀行窓販向けに変額年金商品を開発することだけを目的に設立された。斎藤・第一生命社長が株式会社化を決断した背景には、貯蓄市場進出の足掛かりであるフロンティアが営業開始したことも大きな要因となっている。
「第一生命本体が総合デパートなら、フロンティアはブティック」
こう表現するのは渡邉光一郎・第一生命常務執行役員。あらゆる商品を扱う総合デパートでは、新商品を出すにも既存商品との間で矛盾や有利・不利がないよう、細々とした調整が必要になる。一方、ブティックであるフロンティアは、貯蓄性商品の開発に専念すればいい。また、製販分離で競争力を確保するためには、柔軟で機動的なシステム開発を可能とする体制も必要となってくる。「別組織にすることでフロンティアの競争力だけではなく、第一生命本体の商品開発力の阻害要因をも取り除ける」(渡邉常務)。