「腰が重い」プロ野球界、コロナで変化したワケ 歴史的なJリーグとの連携、徹底的な感染対策

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しかしながら、こうした感染症対策を優先したNPBのマネジメントは、いつまでも続けられるものではない。限られた期間、プロ野球の存続のためにNPBや各球団は耐え忍んだのだ。来季以降もこの状態が続けば、球団の体力が持たなくなる。

2005年の球界再編以降、NPB各球団は主として常連顧客を対象に、濃厚なマーケティングを行うことでリピーターを中心に観客動員を伸ばしてきた。

現在の観客は「野球の試合を観戦する」ためだけに球場に来ているわけではない。ひいきチームのユニフォームを着て大声で選手を応援し、球団歌を合唱し、風船を飛ばしたり、さまざまなアトラクションを楽しむために球場に来ている。

そういう観戦スタイルになじんだ顧客が、コロナ禍によって「静かに観戦する」だけになった球場に、今後も足を運ぶかどうかはわからない。たとえ観客の上限がさらに緩和されたとしても、これまでの「球場での楽しみ」が半減する中で、今の観客数を維持できるかどうかは、まったくわからないところだ。

元通りにプロ野球興行できる日は来るのか

11月に入って日本国内の感染者数は再び急増している。政府は11月12日、コンサートなど大規模イベントでの人数制限を来年2月末まで延長すると発表した。

この期間、NPBはオフに入るから直接的な影響は少ないが、2月1日から始まるプロ野球春季キャンプが例年通り実施できるかどうかは不透明だ。宮崎県や沖縄県など春季キャンプの経済効果に期待する地域にとっても気がかりな状況だ。

コロナ禍は、いまだ終息への足取りが見えない状況だ。JR東日本の深澤祐二社長は「通勤通学客は、新型コロナ禍が終息したとしてもテレワークなどの定着によって、元に戻ることはない」とメディアに語った。この言葉は、今回の未曽有のパンデミックは、人々に半ば恒常的な「行動変容」をもたらそうとしていることを端的に表している。

NPB、各球団も「コロナ禍が終息したら、再び以前のようなプロ野球興行ができる日が戻ってくる」とは考えないほうがいいだろう。それよりも人々の「行動変容」に合わせる形で、組織や運営体制を大胆に変革していく必要があるのではないか。

企業規模のダウンサイジングや、株主構成など、経営面での改革をするためには、プロ野球の憲法たる「野球協約」の変更も考えるべきかもしれない。コロナ禍によるプロ野球の変革は、まだこれからが本番だと言ってもいいと思う。NPBや各球団は今年示した果断な実行力を、今後も遺憾なく発揮してほしい。

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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