NPB本拠地の場内整理や警備は、各球団が永年契約をしている会社が担っている。警備員や場内スタッフの緊張感は、各球団の緊張感を反映していると見るべきだろう。9月19日からは観客上限は各スタジアムのキャパシティの半分、あるいは2万人の少ないほうにまで緩和された。
以降は、観客席にも賑わいが戻ったが、日本ハムのように9月19日からは1万5000人、29日以降2万人に引き上げるなど段階的に緩和した球団もあった。端的に言えば各球団は、今季は「興行収益」よりも「安全」を優先していたのだ。
コロナ禍で各球団が一致協力
こうした厳しい感染症対策が「NPB主導」で行われたことも特筆に値する。NPBは観客上限が緩和された9月19日に「NPB新型コロナウイルス感染予防ガイドライン(有観客開催)」を発表。
97ページに及ぶこのガイドラインには、選手、指導者、スタッフからメディア、観客に至るまで球場来場者が守るべき感染症対策が事細かに決められている。NPB各球団はこのガイドラインに沿って感染症対策を実施していたのだ。
これまでとかく自分の利益を優先しがちだった各球団だが、コロナ禍の前に一致協力したのだ。その甲斐あってプロ野球の観客席からはクラスターは発生しなかった。報道される限りではプロ野球観客の陽性者は1人だけ。
COCOAなどが十分に活用されていないこともあって、感染者数が捕捉できていないことも大きいのだろうが、少なくともプロ野球由来の感染拡大は報じられていない。
今年のNPBの取り組みは、野球界のみならずスポーツ界全体の感染症対策に一定の方向性を与えたのではないか。2021年の東京オリンピックの開催はまったく予断を許さないが、少なくとも国内に関しては、プロ野球のような感染症対策を行えば、大きな混乱は起こらないということを証明してみせたとも言えよう。
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