日本およびギリシャ、スペイン、ポルトガルの国債を分析《ムーディーズの業界分析》
(4) 低い競争力と低調な地域成長率という状況の中で、公共セクターを手始めに、経済のレバレッジを引き下げる必要があることを考慮すると、ギリシャの信用力は長期的に低下するリスクに直面している。
(5) ギリシャ政府が10年3月3日に発表した追加財政再建策は、現在の格付けA2に見合った内容で、財政安定化に向けた政府の決意を明確に表明している。追加再建策と、これまでに発表された他の政策が完全に実施されれば、債務動向が安定化する可能性が高まるだろう。
本稿は、ムーディーズが発行したレポートの抄訳です。
10年2月10日発表“Spain, Portugal & Greece: Contagion or Confusion?”
「スペイン、ポルトガル、ギリシャ:伝染か混乱か」
ムーディーズでは、昨年より10年はソブリンリスクに注目が集まることを予想していた。しかし、今年に入って最初の数週間のソブリンリスクに関する市場の神経質な動きは、我々の予想をかなり上回る。ただ、ユーロ圏内に市場から締め出される明白なリスクに直面している国はなく、市場は流動性リスクに対して過剰に反応しているといえよう。
1月後半にギリシャが発行した5年債は募集枠を上回る応募があり、発行額は予定の30億~50億ユーロを大幅に上回る80億ユーロとなった(新規国債のプレミアムは他の欧州の国債を大きく上回った)。したがって、ギリシャをはじめとする数カ国は、春の償還時期に順調に借り換えができるかについての市場における信用不安は、事実よりも受け止め方に基づくものとみられる。
EUは支援するのか?
加盟国が流動性の問題に遭遇した際に、緊急の流動性支援が提供される可能性に多くの注目が集まっているが、ムーディーズでは、そうした支援が実施される可能性は高いとみている。しかし、それは無条件でも永続的なものでもない。EUの加盟国に向けた支援の概念についての曖昧な態度は、EU高官の声明に示されており、この中で欧州の団結を認識する一方で、EUの安定性に対するモラルハザードの危険性を指摘している。
つまり、ユーロ圏にわたる流動性支援の提供にはインセンティブ(促進要因)とディスインセンティブ(阻害要因)の両方がある。これらの支援要因はEU諸国に対する格付け分析において重要なものであり、いかなる加盟国をも非投資適格と格付けするのを妨げてきた。