マンダムが「オヤジの肌ケア」市場を狙う事情 コロナで外出自粛、得意のスタイリングが苦戦
また、シワ改善クリームがメインターゲットとする40代男性は、団塊ジュニア世代の存在でボリュームゾーンとなっている。2010年に851万人だった40代男性人口は、2020年に926万人に増加した。この人口動態を追い風にルシードも拡大を続ける。2020年3月期のルシードの売上高は、2016年3月期と比べて30%程度伸びた。
ただ、メンズスキンケア市場を狙うのはマンダムだけではない。同市場でシェア2位(イギリスの市場調査会社ユーロモニター調べ)のマンダムを押さえ、トップシェアを握る花王も虎視眈眈と狙っている。
メンズスキンケア市場は「宝の山」
花王の関連会社・ニベア花王で、「ニベアメン」のブランドマネージャーを務める中平美和子氏は、メンズスキンケア市場を「宝の山」と呼ぶ。
ニベア花王の調査によると、20~50代男性のうちスキンケアに興味のある回答者は56%いたが、実際に使っている人はそのうち23%しかいなかった。この潜在需要を掘り起こすべく、ニベア花王は10月に「ニベアメン」ブランドを刷新。スキンケア初心者が手に取りやすい「バーム」(乳液)を強化した。
花王というライバルの存在を抜きにしてもマンダムがメンズスキンケアに力を入れるのには訳がある。「ギャツビー」ブランドのスタイリング剤などで同社が得意とするヘアケア市場の地盤沈下が止まらないからだ。
インテージのデータによると、ヘアケア市場全体の売上高は2010年に299億円あったが2019年には213億円(2019年)となり、10年間で約3割減少した。
マンダムの西村常務は、「ヘアスタイルのトレンド変化」が市場縮小の背景にあると指摘する。20年ほど前は「ワックスを使ってガンガンに固める」髪型が流行っていたが、今のトレンドはマッシュなどナチュラルなヘアスタイル。美容師の技術向上や美容家電の進歩もあり、スタイリング剤の使用量が減っている。加えて、コロナ禍による外出機会の減少が逆風となっている。
その苦戦ぶりは業績にも表れている。インドネシア地域の落ち込みなどもあり、2020年4~9月期の男性向け製品の売上高は205億円と前年同期比で2割以上減少した。マンダムにとって同分野は売り上げの6割以上(2020年3月期)を占める。
10月29日には2021年3月期の通期業績予想を下方修正した。ルシードのスキンケア製品は8月に投入した新製品の寄与もあり、2020年4~9月に前年同期比20%以上伸びているが、同社全体の営業利益は8億円の営業赤字を見込む。
マンダムは「半歩先の製品を先陣を切って提案していく」(倉石氏)ことで、メンズ洗顔料やフェイシャルペーパーなどを市場に定着させてきた。メンズスキンケア市場において美容クリームという新領域を開拓できるのか。
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