そんな配信を見る視聴者の中にはかなり過激な人もいた。罵詈雑言を吐いたり、マサヲさんの死を望むような発言をしたりする人すらいた。
ただ、配信を毎日続けるうちに、だんだん優しい人が増えていった。
青木ヶ原樹海をテーマにしていると広告が付きづらいので、いっそ全面的に切リ捨てた。
収入は、メンバーシップ(有料会員制)と、スーパーチャット(投げ銭機能)に切り替えた。そして過激なことも一切やめて、樹海の中のマサヲさんを安全に導いてくれる人だけとやりとりをするようにした。
そのうちにチャンネル登録者数は増えて、1万人を超えた。収入も、一時的なものであるとはいえサラリーマンの平均月収を超えるほど得ることができた。
そして視聴者の中には、実際にわざわざ泊まりに来てくれる人もいた。YouTubeが導線になって、民宿丸慶に客を呼び込めれば、これからの集客につながるだろう。
ただ、YouTubeを配信することで、金銭以上のものを得たとマサヲさんは感じている。
「コロナ以前よりもずっと強くなれた」
「視聴者さんの中には、自らもつらい立場の人がたくさんいらっしゃいました。コロナ禍によって仕事を失ってしまった人、重たい病気で手術を控えている人など、僕よりもずっと絶望的な環境にいる人もいました。そんな人たちと話をしていくうちに、『いつまでも絶望してちゃいけないな』と考えるようになりました。
結果的に僕は、コロナ以前よりもずっと強くなれたと思います」
そんな心の成長が態度にも表れたのか、実家に帰っていた妻がマサヲさんの元に戻ってきてくれた。マサヲさんは、仲違いしてしまった弟とも近い将来、仲直りできるのではないかと期待している。
だが、残念ながらこれからも厳しい状況は続いていくだろう。
10月は通常どおり営業したが、収支は前年度比90%減という厳しいものだった。
民宿村の民宿もコロナ禍の影響で3軒が営業をやめることを決めた。
「今は、新型コロナウイルスによって宿や飲食業などのオフラインの商売が打撃をくらっています。でもいつか新型コンピューターウイルスでオンラインの商売が全滅になる可能性だってあると思います。なので僕は、民宿(オフライン)とYouTube(オンライン)のどちらもがんばって未来に備えていきたいと思います。
コロナ禍には『つらいときには絶望に負けずに、そのときできることをすればきっと苦境は乗り越えられる』と学ばせてもらいました」
マサヲさんは、民宿丸慶を大成功させることで民宿村全体を盛り上げ、ひいては精進湖全体を活性化したいという大きな夢を語った。
そして、最後に、
「今はバンドをやっていたとき以来の充実した日々が続いています」
と明るい笑顔で話してくれた。
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