「とにかく公務員時代に5年間も無駄にしたという気持ちがあったので、取り戻すために一生懸命がんばりました。
そして、その頃に現在の妻と出会いました。その出会いが人生の転機になり、未来のことを考えるようになりました」
そして5年間修業をした後、35歳で跡を継ぐことになった。
マサヲさんが若旦那になるまで、民宿丸慶はマサヲさんの両親が経営していた。常連がしっかりつき、業績も安定していた。
「両親には感謝しかないですね。借金がなかったので、かなり強気に戦略を打つことができました」
冒頭でも述べたが、民宿丸慶の食事は本当にボリュームがあり、おいしい。とくに野菜がとても立派で味も濃くおいしかったのだが、それらの野菜はすべてマサヲさんのお父さんが自家農園で育てたものだ。
そして中心になって料理を作っているのは、近所のおばちゃんだと言う。
「もう70歳のおばちゃんなんですけど、彼女は小学校の頃から料理を作ってるんです。つまり60年近く料理を作っている達人なんです。彼女が作る料理がまずい訳はないんです。僕は、板前さんの凝った料理よりも、おばちゃんの作る手料理のほうを皆さんに食べてほしいと思います」
青木ヶ原の中からは樹が邪魔になって富士山が見えないのだが、民宿丸慶の屋上からは見事な富士山を見ることができる。早朝青空の中に立つ富士山を目にして、なんとも言えない晴れ晴れとした気持ちになった。
青木ヶ原樹海に泊まって何が観光できるか
「でも宿はいいとしても、青木ヶ原樹海に泊まって何を観光すればいいの?」と思う人もいるかもしれない。
だが富士五湖の周りは全体が観光地だ。
富士山などの山に登る人や高原で遊ぶために来る人もいるし、富士サファリパークや富士急ハイランドなどのレジャー施設で遊ぶことが目的の人も多い。
今は少し減ったが、釣りやバイクのツーリングが目的のお客さんもいた。
「宿の利用方法や、さまざまな魅力をインターネットなどを使って皆さんに知らせるのが僕の役目だと思っています。あの手この手で集客しています」
マサヲさんはかなりターゲットを絞り込んで広告をしている。具体的には
「東京都に住む45歳の女性と、その家族」
というのを目標にした。
目論見どおりそのようなお客さんが多く来泊しており、筆者が宿泊したときにもターゲット通りのお客さんが泊まっていた。
それと同時に値上げもした。
これまでは朝夕の2食つきで5500円で提供してきた。とてもお値打ちなので、たくさんのお客さんが入ったが、両親は2人とも還暦を超えており労働力に限界があった。
「無理して倒れてしまっては意味がないですからね。2食つきで7900円にしました。客は多少減ったものの、収益は減らず、家族ゲンカがピタッとなくなりました」
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