超名門サッカー元主将が教える「天才の育て方」 アジアでも優れた才能の持ち主が育っている

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サルガド:前提として強豪チームのカンテラ(下部組織)で上にいける選手というのは、才能には疑いようがないということ。ただ、そんな選手でもトップチームに上がりプロまでいける選手はほんの一握り。幼少期に天才ともてはやされて、消えていった選手は星の数ほど見てきた。

子どもたちを指導する稲若氏(左)とサルガド氏(筆者撮影)

その一方で、もともと評価が高くない選手がなにかのきっかけで化けて、トップチームに駆け上がっていくこともある。例えば今バルセロナで活躍している17歳のアンス・ファティなんかもそうだね。つまり、選手の将来はどんな優秀な指導者でも言い当てることはできないということだ。

ただ、ヨーロッパの強豪国では、サッカー以外の人間力や社会性を育てるためのプログラムやノウハウをクラブとして持っている。どれだけ技術的に優れた選手でも人間力がないと成長は止まる。成功に近づけるための方法論はないが、伸びる選手の傾向はあると感じている。

稲若:日本だと高校を卒業、もしくは大学を卒業後にプロになるケースが多いです。ただ、世界のサッカー界では15歳でトップデビューすることも珍しくない。ここが日本と世界の埋めがたい差になっていると思います。

サルガド:ヨーロッパではビジネスとしてサッカーが成熟しているが、日本ではそうではない。その点に尽きると思うね。クラブは才能に投資し、大金でよそのクラブに売る。だから、カンテラでも1年で多くのメンバーが入れ替わるし、そのままエスカレートで上がっていくということがない。

そのメカニズムが成立していることで国を超えた競争力も生まれるし、才能が育っていく。選手は商品である、という思考を保護者が理解しており、クラブもしっかりと説明する。プロになる年齢は早いにこしたことなく、今であれば18歳でも少し遅いくらいだね。

例えば大学を卒業してプロになったとして、22歳だともう可能性はだいぶ狭まってしまっている。ただ、これはその国の文化や保護者の考え方によるものなので、否定することはできない難しい問題でもある。

「自分で考える力」を育てよ

稲若:あなたは何度も来日して子どもたちを指導しており、指導方法も見ています。そこで感じた日本サッカーの課題があれば教えてください。

サルガド:(稲若)健志と一緒にハイスクールの試合や練習を何度か見て、選手というよりも指導者に欧州とは大きな差があると感じている。先程も述べたが、選手は指導者によって大きく化ける。そのためには指導者が「なぜ必要なのか」「どういう理屈でこうすべきなのか」という道筋をたてて説明ができないといけない。

日本人はボールをつなぐ方法や技術、止める技術はスペイン人と比べてもうまいくらい。ただ、サッカーは点を奪い合うためのスポーツだ。ボール回しやドリブルはあくまで手段でしかなく、ボールを回しても勝てない。

要するにゴールの奪い方がわからなくて、そこまで理論的に道筋を立てて説明できないことが最大の問題だと捉えている。試合中でも何度も「シュートで終われ」と言っていたけど、シュートで終わることに意味はなく、目的はゴールを奪うことのはずだ。

練習を見ていて、みんなそろってインステップで気持ち良くシュートを打っていたけれど、そんなシチュエーションは試合ではほぼない。選手が自分で考える力を育てる指導をしないと、世界との差は広がる一方だろう。

稲若:スペインの指導者からは、「日本の子どもたちは、ドリブルはすごいけどサッカーを知らない」という声を聞くことがある。技術よりも判断力の部分で劣り、結果が出ない現状に歯がゆさを感じます。

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