日本のポエム化は中田英寿から始まった! ポエム化を助長するのは安倍さんとEXILE

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安倍さんが持ち出す言葉はカタカナが多い


たとえば、「職業安定所」と言わずに「ハローワーク」と言うとき、何かがごまかされている。本来は、「職業を安定させるための所」です。漢語にすると、これ以上ないほど明確で理解しやく、身もフタもない言い方になる。「職安通い」というネガティブなイメージがまとわりついてしまったから、新しい言葉を作ったのでしょう。

「ハローワーク」に通う失業者自身も、自分が失業者で、仕事を求めているんだという現実を直視したくない。「ハローワーク」という、もう少しワクワクするような場所で、新しいジョブとの出会いがあるかもしれない、と思いたい。

カタカナや英語も昔から使われている言葉はまだいいのです。何これ?っていうのがあるでしょう。「ホワイトカラーエグゼンプション」とか。これは要するに、管理職の残業代を払わないということ。「管理職残業代削減」法案とか言えば、とんでもない法案だって話になりますけど、わざと難しいカタカナにして、わかりにくくしている。漢語で言うと、物事は理解しやすくなるのです。あまり理解してほしくないときに、カタカナにするのです。

──経済産業省が「スマートワーク」構想を打ち出していますが。

管理職だけなく、平社員も残業代をなしにするという。何がスマートなのか。「平社員残業代削減」構想と言うべきでしょう。

安倍(晋三)さんが言っている「教育バウチャー制度」も何だかよくわからない。安倍さんが持ち出してくる言葉にはカタカナが多いです。

──やまと言葉はどういうものが危険なのですか。

「寄り添う」「触れ合う」「想い」とか。お役所的な言葉では「交流」「支援」「計画」というように、必ず漢語になるはずなのです。漢語になっていれば、誰に責任があるのかが明確ですが、「寄り添う」と言った瞬間に、ぼやっとしてしまう。いくら予算がつぎ込まれて、いつまでに何をどうするのかという責任論から離れてしまう。「被災者に寄り添う」って、具体的には何もしないけど応援しています、みたいな気分だけでもいいわけですからね。

聞く側も、官僚的な硬い言葉を並べられるより、やわらかいやまと言葉のほうが、心がこもっているような錯覚を起こす。だから、政治家や役人がカタカナ、英語、やまと言葉を使ったら注意しなければならない。

──漢語でも、ベタな言葉を企業や若者が使い、「ポエム化」しているようです。NHK「クローズアップ現代」で今年1月、「居酒屋甲子園」というイベントが紹介されて話題になりました。居酒屋で働く若者たちが、「夢」「仲間」「絆」といった言葉を連呼して熱い思いを絶叫しています。

※例

夢はひとりで見るもんなんかじゃなくて、みんなで見るもんなんだ!
人は夢を持つから、熱く、熱く、生きられるんだ!

 

昔の愛国心教育みたいなことを企業単位でやっていたりします。企業が利潤の追求のためにやっている部分も、もちろんあると思いますが、そういうことを抜きにして、彼らは無邪気に「仲間との絆」が第一だという気持ちが非常に強い。

「絆」という考え方は、今の40歳以下の人たちの強烈な特徴だと私は思います。私なんかの年代(50代)だと、ちょっと気味が悪い。「仲間が第一」というのは任侠の世界の哲学で、彼らは親兄弟より、法律より、正義より、何より仲間が大切。仲間との絆があらゆる徳目に優先する。そういう友情原理主義が、今の若者の心をつかんでいる。

企業は「うちの会社のために命を懸けろ」とはなかなか教育できないし、何の説得力もないから、仲間と助け合うことを教育しているのでしょう。彼らも「自分の勤めている居酒屋のために命を張るぜ」とは言っていない。仲間のために頑張っているのです。

──その純粋さを企業は利用している。

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