日本中がポエムであふれている。
「夢」「勇気」「仲間」「絆」「寄り添う」「イノベーション」──。
何かを語っているようで何も語っていない抽象的な言葉が、政治やビジネス、ネット、J-POP界隈に蔓延している。
世の中はいつからポエム化し、人々はポエムに何を求めているのか?
ポエム化現象のナゾを5日連続で解明していく。
4日目は、ミュージシャンのマキタスポーツさんに、J-POPのポエム化を伺う。
※1日目 小田嶋隆さんはこちら
※2日目 常見陽平さんはこちら
※3日目 中川淳一郎さんはこちら
「夢」「勇気」「仲間」「絆」「寄り添う」「イノベーション」──。
何かを語っているようで何も語っていない抽象的な言葉が、政治やビジネス、ネット、J-POP界隈に蔓延している。
世の中はいつからポエム化し、人々はポエムに何を求めているのか?
ポエム化現象のナゾを5日連続で解明していく。
4日目は、ミュージシャンのマキタスポーツさんに、J-POPのポエム化を伺う。
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マキタスポーツさん ミュージシャン、俳優、コラムニスト
1970年生まれ。2013年、映画『苦役列車』での演技により、ブルーリボン賞新人賞、東スポ映画大賞新人賞を受賞。現在、NHK連続テレビ小説「花子とアン」に出演中。本名の槇田雄司名義での著書に『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)、『アナーキー・イン・ザ・子供かわいい “父親に成る”ということ』(アスペクト)がある。最新刊はマキタスポーツ名義での『すべてのJ-POPはパクリである 現代ポップス考』(扶桑社)。
「翼」「扉」「桜」「奇跡」が定型句
J-POPにありがちな歌詞を揶揄した2ちゃんねるのスレッド「J-POPの歌詞における『何か』の探され方は異常」が以前、話題になった(以下に引用)。
翼広げすぎ・瞳閉じすぎ・君の名を呼びすぎ・会いたくて会えなさすぎ・桜舞いすぎ・パスタ作りすぎ・季節めぐりすぎ・君のこと考えすぎ・もう一人じゃなさすぎ・あの頃に戻りたすぎ・一歩ずつ歩いて行きすぎ・奇跡起こりすぎ・同じ空の下にいすぎ・夢を夢で終わらせなさすぎ・眠れぬ夜多すぎ ・寂しい夜迎えすぎ・不器用な俺だけどお前のこと守りすぎ・何かがわかるような気がしすぎ・移りゆく街並みを眺めすぎ・つないだ手離さなすぎ・光が挿す方へ行きすぎ・君がいれば他に何もいらなすぎ……。
これはまさにJ-POPのポエム化を物語っているだろう。

「J-POPの歌詞が同じような言葉を使わざるをえない事情もある」と話すのは、ミュージシャンのマキタスポーツさんだ。
マキタスポーツさんは、1985年以降に発売されたJ-POPのヒット曲を1000曲以上分析し、ヒットの法則を著書『すべてのJ-POPはパクリである』に公開した。約30年分の歌詞を調べて、実際に多用されていた言葉は次のとおりだった。
「翼」「扉」「桜」「奇跡」「夢」「季節」「永遠」「言葉」「宝物」「エール」「強がり」「弱虫」「大丈夫」「受け止める」「ありがとう」「歩き出そう」「大切な日々」……。
この中でも特に、「翼」「扉」「桜」「奇跡」の4つが定型句。これにまたありがちな動詞を組み合わせると、「翼を広げて」「扉を開いて」「桜、舞い散る」「君と出会えた奇跡」というように、何となくそれらしい歌詞になるという。
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