男たちが抱える「弱音を吐けない」という重い病 男性の自殺者が多い背景に「男らしさ」の呪縛

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厚生労働省は、相談窓口などについての情報をまとめたサイト「まもろうよこころ」を2020年8月に開設しました。このホームページを確認してもわかるように、自殺対策の基本はやはり相談です。

さきほど、調査の結果から確認したように、男性は人に「弱さ」を見せることに対してためらう傾向が見られます。重要なので繰り返しますが、「男性でも悩みを抱えたり、ストレスを感じたりしたときには弱音を吐いてもいい」というメッセージは強く男性たちに訴えていかなければなりません。

その一方で、男性の相談を聞く側も、「いい年をした男性が悩みや葛藤を抱えているわけがない」などといった予見を持たないことが重要です。たとえ、弱音を吐く姿が自分の思う〈男らしさ〉とは違うものであったとしても、それを表情に出したり、ましてや言葉にしたりすることがないようにしたいところです。

もちろん、これですべて説明できるわけではありませんが、男性の自殺者が多い背景には、明らかにこのような〈男らしさ〉の問題があると言えるでしょう。

相談する、相談されるスキルを磨く

相談の場合は、する側にもされる側にも一定程度のスキルが求められます。しばしば、相談する人はただ話を聞いてほしいだけだと言われますが、相談内容に同意してほしいこともあれば、具体的な解決策を聞きたいこともあるはずです。

日常会話では、わざわざどのような前提で話をするかをお互いに確認することはありません。しかし相談の場合は、ただ話を聞いてほしいのか、同意を求めているのか、あるいは具体的な解決を示してもらいたいのかあらかじめ伝えておくと、円滑にコミュニケーションがとれると思います。

こうした改まった形での会話に、「気恥ずかしさ」を感じる男性がいるかもしれません。率直に言えば、45歳の中年男性である僕自身が、このような文章を書いていながら、人に「弱音」を吐くことは苦手ですし、真面目な相談を誰かにするのは気が進みません。

そもそも、悩みを聞いてくれる人がいるのだろうかという不安もあります。くだらない見栄だと思われるかもしれませんが、「強さ」を求められてきた男性にとっては、相談自体のハードルが高いことを知ってもらえればありがたいです。男性は、いきなり「弱さ」を見せられるようにならなくても、「男らしさにこだわっているかもしれない」と認識するだけで、自分自身に対する見方がずいぶんと変わるでしょう。

 

過去連載同様、田中先生へのご相談も受け付けております。ご相談のある方はこちらの投稿フォームへ。
田中 俊之 大妻女子大学人間関係学部准教授

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たなか としゆき / Toshiyuki Tanaka

1975年生まれ。2008年博士号(社会学)取得。武蔵大学・学習院大学・東京女子大学等非常勤講師、武蔵大学社会学部助教、大正大学心理社会学部准教授を経て、2022年より現職。男性学の第一人者として、新聞、雑誌、ラジオ、ネットメディア等で活躍している。

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