その話以降、里美の態度が急に冷たくなったのだという。そして、それから1週間後に、里美の相談室から、「婚約は解消したい」という連絡が入ってきた。その理由は、こうだった。
「結婚に向けての話を細かくしていくうちに、価値観が合わない感じがして、今後結婚してもうまくいかないと思った」
“価値観が合わない”というのは、婚活で相手をお断りするときにいちばん使われる、体のいい常套句だ。そもそも価値観がぴったり合う人間なんてこの世には存在しないし、譲歩したり受け入れたりしながら、夫婦は生活をしているのだ。
ともあれ、気持ちが変わったしまった女性が、もう一度結婚に前向きになるとは思えない。
「残念ですが、仕方ないですね」
聡は、この婚約破棄を受け入れた。
しかし、仲人としてはこの話は壊れてよかったと思っている。そもそも家賃と光熱費を男性に支払わせ、さらに家計に25万円出させる。そして、自分が入れるのはたったの5万円。家計を30万円にして、そのうち20万円を貯金するというのは、誰がどう考えても、おかしな話ではないか。
今の日本で、セレブ生活をしている女性は何人いるのか
今や女性も男性と肩を並べて仕事をしたり、キャリアアップをはかったりできる時代になった。“育メン”という言葉が生まれ、男性も育児休暇が取れるようになった。家事や育児をどちらかが多く負担するのではなく、フィフティー・フィフティーで分担している夫婦も増えつつある。
しかしそんな中でも、結婚したら男性の稼ぎをあてにし、リッチにゴージャスに暮らしていきたいと願う“セレブ婚”に憧れている女性たちが存在していることも確かだ。
しかし、冒頭でも記したが、1000万円以上稼いている男性は、全体の8%にも満たない。これは男性既婚者も含まれている数字で、独身者はもっと少ない。その層を狙いにいく30代、40代の女性たちに、勝算はあるのか。
さらに最後に記しておく。男性が1000万円稼いでいたとしても、税金や保険料の高い日本では、思い描いているようなゴージャスリッチな生活はできるはずもないのだ。
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