先日、私の相談所でこんな破局劇が起きた。
義雄(仮名)は、50代前半の自営業なのだが、年収が1500万円あった。投資で成功し、不動産も所有しているので、不動産と預貯金の総額は、億を超えていた。
彼は、これまでずっと 「結婚はしたい」と思ってきた。しかし、30代、40代ととにかく仕事が忙しく、自然の出会いに身を任せていたら、50歳を超えてしまった。
「できることなら、最後のチャンスに子どもが欲しいんですよ」
入会面談のときに、「結婚にあたって、絶対に譲れない条件はなんですか?」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
子どもが欲しいとなると、選ぶ女性の年齢層が絞られてくる。お見合いが組める確率は厳しいかと思ったのだが、年収がよかったので、かなりいい打率でお申し込みを受けてもらうことができた。
一気に10人くらいお見合いをしたのだが、その中の1人、由恵(仮名、39歳)と、真剣交際に入ることになった。
「今日は、由恵さんと、都内でデートをしてきました。あるブランド店に行って、婚約指輪をちょっと見たりもしたんです。やっぱり女性はダイヤの指輪に憧れがあるんでしょうね。指にはめてうっとりとしていましたよ。正式に婚約することになったら、彼女が欲しいものをプレゼントしようと思います」
弾んだ声でデートの報告をしてきたので、これは成婚退会も間近だと、私は信じて疑わなかった。
都内一等地の戸建てを見に行ったが…
ところが、そこから数週間が経って、義雄から、「ちょっとお話ししたいことがあります」と連絡が入ってきた。
「由恵さんから今朝、『この結婚は考え直させてください』というLINEが来たんです」
何があったのかを聞くと、くぐもる声で言った。
「これまでも幾度となく『どこに住もうか』という話をしていたんです。彼女が結婚後に『住みたい』と言っていた場所は、都内の一等地でした。しかも『戸建てがいい』と言うんですね。その場所の戸建ては億を超えます。けど、まあ、僕は貯金もあるし、買えなくもない。で、この間一緒にある戸建てを見に行ったんですよ。そしたら、そこを彼女はえらく気に入ったようで、『ここなら、子どもを育てるにもいい環境だわ』と、うれしそうに話していました」
そのとき、義雄の中では、“モデルルームの見学”の意味合いだったと言う。しかし、由恵は、もうそこを義雄が購入するものだと思ってしまった。
「僕は仕事柄、不動産に関しては目利きができるほうなので、見に行った戸建ては、値段の割にそれほどいい物件ではなかったんです。それにこんなにコロナが蔓延していて、東京オリンピックも開催されるかどうかわからない状況。今物件を買うのは正解じゃない。その話を彼女にしたんです。そうしたら、すごい剣幕のLINEが来ました」
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