「品のないクレーム」に悩むゴミ清掃員達の哀愁

「俺らは人目についちゃいけねえ仕事だからよ」

人の注目をいかに浴びるかだけを考えて生きてきたので、まるで見られないという視線に初めは驚いたのだ。だが、もっと驚いたのは、ゴミ清掃を始めるまで、僕自身も清掃員を見ていなかったことに気づいたことだった。

それまで僕は、ゴミ回収をしている場面に出くわしても、なるべく嫌な顔をしないように心がけ、「何事もないですよ!」顔で、見ないふりをして通り過ぎていた。これとまったく同じ態度を受けている。

しかし、だからと言ってまじまじと見てほしいというものでもない。ゴミ清掃は公の仕事だから、隅から隅まで見られていると思って従事しろと、よく会社の朝礼で言われる。不思議なものだが、透明人間のような錯覚には陥るが、厳しくチェックされているという妙な感覚をゴミ清掃員は感じている。

山賊やガラガラヘビ以外にも理不尽なクレームはある。

「ゴミ清掃車はこの道を通るな」

でもわれわれはその道のゴミも回収しなくてはならない。常勤で働いている人は、その道の各家庭のゴミを手で持って何度も運ぶ。清掃車を集積所につけられるのは嫌でも、ゴミは排出する。

「回転板の音がうるさいから、ここではボタンを押してはいけない」

でもゴミは排出する。理由を聞けば、最近夜勤に変わったから、朝は寝ているということだ。両者とも剥いて剥いて芯を覗けば、最終的な言い分は、税金で飯食っているんだから、従って当然だろうというカードを用意している。でもそのカードは無効だと思う。

もし国がゴミ事業をやめたらどうなるか

もしゴミ事業をやめて、その分の税金は違うことに回しましょうとなったら、国としてはラッキー以外の何物でもない 。年間約2兆円もの予算を費やして、赤字にしかならないゴミ事業がなくなれば、悩みの種が1つなくなる。

何だったらその分、税金を還付いたしましょう。家庭から出たゴミは各々、ダイオキシンの出ない小型の焼却炉を買って燃やしてください。灰は庭に埋めてはいけませんが、コンクリートで底をひいて雨で流れないようにすればオッケーです。少しでもお金にしたいなら缶とかびんとかリサイクル業者に持っていったらいいですよー。換金されますんでー。ゴミ燃やすの面倒だと思いますんで、なるべくゴミの出ない生活をするでしょうから、願ったり叶ったりですよー。

でも不法投棄したら、捕まえますよー。衛生面でも防犯面でも見逃す訳にはいかないですからねー。焼却炉を置けない家庭はゴミ業者と契約してくださいー。でも生活に絶対に必要なものですから、きっと業者も足元を見て、どんどん値上げしていきますけど、仕方がないですよねー。楽になりました。あ、ざーすっ!となる。

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僕らは労働の対価として税金から給料をもらっている。できるだけ心地よく住民の皆さんには過ごしてもらいたいと思っているが、うちの店に是非寄ってくださいという営利を目的としたサービス業とは違う。理由によってはできる限りのことはするが、税金を横領している訳ではないので、理不尽な要求すべてを飲み込むことはできない。

おばあちゃんがゴミ重いから持っていってよーというのはよろこんで運ぶ。困っていることがあれば、手助けするのは僕らとしても嬉しい。人の役に立つってやってみると楽しい。

これはゴミ清掃だけの話ではなく、仕事の内容とそれに見合った報酬を何の引け目もなしに、堂々と受け取れる時代にしたいと思っている。

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