中国VSインド「デジタル超大国」の勝者の行方 外資を規制するか開放するかで戦略が異なる

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しかしデジタル経済の特性を考えると、その競争は容易に歪められることも事実だ。デジタル経済では、あるサービスに多くの顧客が集まることで、より一層顧客を集めることができる。ネットワーク外部性があるためだ。それゆえに、初期の段階でのわずかな差が、雪だるま式のフィードバック効果(循環効果)をもたらすことになる。

複数の企業がいまだ勝敗がつかない戦況のなかで競争しているとき、小さな機能の追加も、そしてまたグレート・ファイアーウォールに代表されるアクセス制限も(当初それは永続的なものというよりも、検索サービスでの断続的または突発的な制限および遅延であった)、長期的にはまったく異なる帰着点にデジタル経済を連れて行ってしまう。

壁のなかでの革新もう1つ確認しておきたいことは、「壁のなかでの革新」がなぜ可能となったのか、である。確かに2010年代以降、「グレート・ファイアーウォール」は、事実上の参入規制として機能してきた。

プラットフォーム間の競争も

同時にこの時期以降に、GAFAすら構築できていなかった、多様なサービスが統合化された「スーパーアプリ」がなぜ中国で生まれたのか。この点を考えるうえでは「小さなイノベーション」を牽引したエンジニアたちの存在、そしてプラットフォーム間の競争があった。

ローカルなニーズと可能性を発掘し、さらに拡張拡大して競争していくような力学と緊張関係が、2010年代の中国のインターネット業界にはあった。

同時に、中国のベンチャー企業も、そして大手IT企業も、公開されているプログラミング成果、いわゆるオープンソースを活用している。この意味で、デジタル化を考えるうえでは資金、市場、データ、プログラミング資源といった各面で国内外の開放と閉鎖の問題を考えることが必要である。

プログラミングの記述(ソースコード)を共有する「オープンソース」の広がりもあり、グローバルなソフトウェア開発環境へのアクセスは新興国に開かれている。

中国はオープンソースへのアクセスの面で「グレート・ファイアーウォール」を設けたことはないのである。このために、仮に国内市場への外資規制を導入したとしても、サービス開発と企業育成の面では、それほど大きな障害とならなかった可能性がある。

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