犯人は生き物好き?池にブラックバスを放つ謎 悪質行為で貴重な生物の命が失われていく
岐阜県養老町と海津市の境目の下池地区。濃尾平野の西の端、三重県との県境に位置するこの地域は、西側を山、東側を木曽川水系の揖斐川(いびがわ)に囲まれています。川の水位よりも低い土地もあり、水田地帯が広がっています。
この地域は昔、下池と呼ばれる大きな池の一部でした。そのまん中に、「下池ビオトープ」はあります。直径20メートルにも満たず、筆者も胴長を着て入ってみると、あっという間に1周できました。澄んだ水がためられ、周囲の水路を網ですくうと、ドジョウや小型のゲンゴロウの仲間、ダルマガエルの仲間などが次々に捕れました。
この池には、とても貴重な魚がすんでいます。その名はウシモツゴ。日本でも、岐阜や愛知などにしかいない、体長5センチ前後の小さな魚です。環境省のレッドリストでは、絶滅危惧IA類に分類されています。これは絶滅の一歩手前というくらい危ない状況だというレベルです。
「下池ビオトープ」のとても貴重な魚
岐阜県は、条例によって「指定希少野生生物」に指定し保護しています。捕獲や殺傷など、禁止されていることをすれば、1年以下の懲役や100万円以下の罰金が科せられます。
下池ビオトープにウシモツゴがいる背景には、地元の歴史と、人々の努力があります。
この地域には10年くらい前まで、国の天然記念物で、種の保存法の国内希少野生動植物種(希少種)にも指定されているイタセンパラというタナゴの一種など、貴重な生物が残されていました。
しかし、農業の近代化に伴う生息地の消失や、侵略的外来種の侵入によって、貴重な生き物が次々と姿を消していきました。ウシモツゴも1990年を最後に確認されていませんでした。
では、なぜ今下池のビオトープにウシモツゴがいるのか。それは、最後の確認の少し前から、絶滅の恐れが高いとして、滋賀県の琵琶湖博物館に一部が移され飼育が続けられてきたからなのです。
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