「ヴィレヴァン」を映画の題材に選んだ深い理由 監督と脚本家が語る「企業もの作品」の可能性

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――スポンサーではない分、逆にやれることもあるのではないでしょうか。

後藤監督:そうですね。だからこそ、好きにできたというところはありました。ただ細かい問題としては、他のスポンサーが付きづらいということはあります。

テレビでスポンサー付きの枠に流すのは難しいんですよ。他の会社から「なんでうちの金でヴィレッジヴァンガードの番組を作らないといけないの」と。配信ドラマとかであればどんどん作れるのかもしれないですが、その場合はどうやって制作費を捻出するのかという問題につきあたる。結構、ギリギリのバランスで作っているんです。

企業ものの作品の可能性を感じた

――カンヌ国際映画際に選ばれた「本気のしるし」をはじめ、メ~テレは面白い企画の映画・ドラマを多数作っている印象があります。メ~テレに持っていった理由もその辺りにあるのでしょうか。

後藤監督:すばらしい中規模映画をたくさん製作していたので、メ~テレさんに持っていきたいと当初から思っていました。選択肢はひとつだけでしたね。ひとつの作品として中身を見てくれるだろうと思ったからです。

いながき:業界の中でも、すごく骨のある作品をやっていて、テレビドラマも攻めていると評判になっている。これだけとんがっている企画なら、メ~テレしかないと。

後藤庸介/ごとうようすけ 1977年生まれ。神奈川県横浜市出身。 2002年にTBSに入社。その後フリーの期間を経て、2009年に共同テレビジョンに入社、若松節朗に師事する。現在は再びフリーとなり、監督・プロデュースを行っている。主な作品に「世にも奇妙な物語」「ボイス 110緊急指令室」「左ききのエレン」「パパがも一度恋をした」など (筆者撮影)

後藤監督:ただ、さすがのメ~テレさんも最初はポカーンとしてましたけどね。「本屋が舞台? どんなドラマなんだ?」と(笑)。今は、だいぶ喜ばれているようです。

また今回ヴィレッジヴァンガードとやってみて、企業ものの作品の可能性を感じましたね。こういうことをやりたいと思っている企業さんは結構多いので、ちゃんと話をして、ウィンウィンの状況を作れば、まだまだいいコラボができると思っています。

いながき:この作品によってヴィレッジヴァンガードにいい効果は出たんですか? 

後藤監督:この作品の経済効果はあったかと聞いたら、「いや、儲かってはいません。でも離職率が大幅に下がりました」と。結構、社内での効果はあったみたいです(笑)。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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